[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
国立宇宙研究センター(CNES)
元記事公開日:
2013/05/01
抄訳記事公開日:
2013/06/17

研究室長: 偉人たる者の資質

Directeur d’unité

本文:

国立科学研究センター(CNRS)が発行する「CNRSジャーナル No.272」(2013年5-6月)の30~31ページの標記記事によると、CNRSでは研究室長の数多くの任務を側面支援する目的で、研究室長職に特化した包括的措置を講じる。記事の概要は以下のとおり。

・CNRS総裁アラン・フックス氏の言葉によれば、研究室長らは些か「ブルー」な気分になっている

重くのしかかる責任、高度の専門性が要求されてますます複雑化する仕事の環境、研究歴の評価では管理能力はあまり重視されないことなど、研究室の長たるは決して楽なことではなく使命感も萎えてくる。「10年ほど前から研究室長職の魅力の低下が見られ、志願者の数も減って任期の更新も少なくなっている。中には任期途中で辞退する例もある。」とフックス氏は嘆く。しかしながらフランスの研究の基盤として共同研究ユニット(UMR)の役割が再認識されている時代にあっては、研究室長職に戦略的役割があることは明らかである。

・複数筋の監督下で研究ヘッドは唯1人という現状に対する措置

2012年、CNRS人文社会科学研究院の研究担当副院長を委員長とし複数の作業グループで構成される運営委員会が、研究室長職の意義を見直し改めて重要な位置づけを与えるべく、研究室長の包括的支援措置をまとめた。「我々の組織的検討は現状に立脚したものである。つまり研究室の運営が、かってより乏しい資源でより多くの支援元に対応し、しかも研究室は研究プロジェクトに一体化されている。研究室長が新たな裁量の幅を見出せるよう支援する必要がある」とフックス総裁は指摘する。

具体的には作業グループが4つの領域に取り組んでいる。潜在的な研究室長候補の発掘、研究室長への特命書、研究室長の実務研修コース、研究室長が委ねられた任務の評価と有効活用の4領域である。2013年は上記措置の一部が初めて実施される転換の年である。2013年から研究室長は特命書を受け取ることになる。「この種の通達はこれまでにも存在したが、その制度化・一般化により協調的性格が強まり大きな変革になる」とCNRS上級管理職担当部長は言う。研究担当の幹部が研究室長と十分協議の上作成し、研究室が依存する各監督筋が署名するこの特命書には、達成すべき目標が示される。特命書は研究室長の法的正統性を大きく認めたものである。各監督筋が研究室長に信任を与えることで研究室長の役割が大きくなる。

・自由に選択可能な研修コースを設置

研究室長の指揮能力は任期期間中を通じて維持される必要がある。これまでは職務研修など研究室長に提示される支援の大半は任期の初めに集中しており、その後は急速に少なくなっている。すでに存在していて問題なく機能している部分は一体的に取り込み、欠けている部分を新たに考案した実研修コースを設けることで、情況は変わろうとしている。研究室に極力近いところでの短期研修を優先し、任期の全期間に渡って行う。もちろん最初の年は頻度が高くなるが、研究室長は自分が必要とするときに、広範に用意された研修コースの恩恵を受けることが出来る。

・任期途中での面接の実施

研究室長は任期期間中に、経験等の情報交換を可能にする仲間とのワーキング・セミナーへの参加が可能になる。また任期の途中で研究担当幹部との面接に呼ばれることもある。任期途中のこの面接も改革の一つである。

・研究歴のみが評価される現状に対する措置

現在、研究者の経歴の評価は研究業務のみに基づいている。管理や運営の責務は不利になることが、研究室長を悩ませている。さらに研究室長の適性も年とともに変化している。この種の職務に就くのも次第に早くなっており、そのために任期終了後の経歴が長くなっている。したがって公平な方法での評価のみでなく、研究者が研究室長職を選んだ場合の支援も必要である。元の研究職に戻るにしても、管理の道に転向するにしても、CNRSがその目標達成のカギを与え得る必要がある。

[DW編集局+JSTパリ事務所]