[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
大統領府
元記事公開日:
2013/12/10
抄訳記事公開日:
2014/01/22

NSTC報告書:米国における大気汚染観測システム

Air Quality Observation Systems in the United States

本文:

国家科学技術会議(NSTC)は12月、アメリカにおける大気汚染観測システムに関する報告書を発表した。当該報告書は、環境保護庁(EPA)、海洋大気局(NOAA)、航空宇宙局(NASA)、米国農務省(USDA)、エネルギー省(DOE)、保健福祉省(DHHS)、国土安全保障省(DHS)、内務省(DOI)及び各州や地域のパートナー団体が定期的または集中的に回収し分析した観測データやプログラム、手順を総合的に分類したものである。今後観測に関連して必要となる事項(観測ニーズ)や機会、それらを実現する際障害となる懸案事項などについても触れている。特殊プログラムや計測した汚染物質については付録に詳細をまとめた。
報告書の概要を以下の通り。なお、掲載順位は優先度と一致するものではない。

観測ニーズ
1. 地域の観測技術や汚染物質排出削減努力は進んでいるものの、それぞれが国内の大気浄化にどれだけ貢献しているかを評価するため、国内外の汚染源から排出される物質の特徴をつかみ、比較分析を進める。
2. 汚染物質の沈着が水界生態系、陸上生態系にどのような影響を与えるか理解するため、大気圏や堆積物のモニタリングを強化する。
3. 気候変動の記録を進め、汚染物質の自然放出や大気推移が発生する可能性がある地域を観測する。
4. 排出管理戦略の的確な評価をするため、オゾンや粒子状物質(PM)の前兆により注意をすべき。
5. 各市町村の行政団体における経済的負担を軽減するため、順守監視がより効果的に行えるような方法を検討すべき。

機会
1. 衛星を活用して大気の質と排出を観測できるようになり、空間的・時間的な質が急激に向上している。今後、鮮明な解像度の衛星写真が提供されるようになれば、分析や統合の機会が生まれてくる。
2. 直接観測が難しい場合によっても、信頼できる大気モデルが構築されている。
3. オープンアクセス政策により、様々な団体が観測データ、メタデータ、処理ツールなどを活用できるようになり、一見関係のない研究機関との協力が生まれるようになった。

推進にあたっての障害
1. 観測を継続するためのインフラ維持の費用は年間予算削減の対象に挙げられやすく、長期計画へ影響を及ぼすことがある。
2. 各省庁は独自の優先プログラムは重視するが、共同責任の分野においては情報を十分共有しないことがある。
3. 課題によってはどの省庁の規制範囲にも該当しないため、見落とされることがある。
4. 最新技術に関しては助成金が発生するものの、情報処理ツールや伝達ツールに対しては資金が不足しがちである。
5. 政府からの命令や他のインセンティブがない限り、大気観測技術の商用化は市場インセンティブに欠ける。

結論
米国には頑健で有益な大気観測システムのネットワークが存在しており、近年の技術開発により、今までにない機会が生まれている。しかし、助成金の配分方法や各省庁・機関の協力体制が不十分なため、全てが十分に活用しきれていない現状がある。
NSTCの環境・資源・持続可能性委員会(Committee on Environment, Natural Resources, and Sustainability; CENRS)は大気質研究小委員会(Air Quality Research Subcommittee; AQRS)に基づき、他省庁間にわたる観測ワーキンググループの設立を検討している。

[DW編集局]