[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州共同体研究開発情報サービス(CORDIS)
元記事公開日:
2014/03/13
抄訳記事公開日:
2014/04/23

食糧安全保障の課題に対する「目覚ましい」新たなアプローチ

EU project pioneers 'remarkable' new approach to food security challenge

本文:

欧州共同体研究開発情報サービス(CORDIS)の2014年3月13日付のニュースで、標記の記事が掲載されている。以下にその概要をまとめる。
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世界人口が増加を続けるということは、水や土地からエネルギー、食糧に至るあらゆるものに対する需要が急速に増大するということである。

しかし、従来の農業慣行や気候変動といった様々な要因が絡み合うため、こうしたニーズに対処する我々の能力には限界がある。EUが助成するプロジェクトが、排出量ゼロの持続可能な食糧生産を可能にする革新的なアクアポニクス・システム(魚の養殖と野菜の水耕栽培を一体化したシステム)の実現可能性を実証することで、この喫緊の課題の一部に対処しようとしている。

このINAPROプロジェクト(Innovative model and demonstration based water management for resource efficiency in integrated multitrophic agriculture and aquaculture systems(統合された複合栽培・養殖システムにおける資源効率向上のためのモデルと実証に基づく革新的な水管理))は、EUの第7次フレームワーク計画の下、約600万ユーロをかけ、4年間にわたって行われる。最終的には、スペイン、ベルギー、ドイツおよび中国におよそ500㎡規模の実証施設を設け、以前ドイツで実施されたASTAF-PROプロジェクト(温室で排出量ゼロのトマトと魚の生産を行うためのアクアポニクス・システム)をもとに実証作業が進められる。

高度な技術が駆使されたINAPROプロジェクトには、8ヵ国から18のパートナーが参加しており、ベルリンにあるライブニッツ淡水生態学・内水漁業研究所(Leibniz Institute of Freshwater Ecology and Inland Fisheries:IGB)に拠点が置かれている。ここは、研究者によりASTAF-PROの技術が開発された場所である。

アクアポニクスは、基本的には水産養殖と水耕栽培を組み合わせたもので、要するに魅力的で生産性の高い統合されたシステムで魚と野菜を育てるという取り組みである。アクアポニクスには肥沃な土壌も大量の水も不要で、世界中ほぼどこでも実施することができるため、その用途は無限に近い。IGBの研究者は、環境にも優しいこのような技術は、世界の今後の食糧安全保障にも「目覚ましい」貢献を果たす可能性を秘めている、と考えている。

この新規プロジェクトでは、(望ましくは)水とエネルギーの効率がともに高く、園芸、養殖のいずれにとっても最適の生産条件を維持できるようなコンセプトをモデル化、構築、試験することで、アクアポニクスを採算の取れる事業に育てる試みが行われる。欧州のアプローチは、世界的にも萌芽期にあるアクアポニクスの研究分野で重視されているが、その根本にあるのは、養殖と水耕栽培における卓越した研究と技術革新の世界的な拠点としての欧州のステータスを高めることである。

[JSTパリ事務所]