[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
ビジネス・イノベーション・技能省(BIS)
元記事公開日:
2014/07/10
抄訳記事公開日:
2014/08/25

英国サイエンスパーク協会30周年記念行事でのウィレッツ大臣の講演 

Speech by David Willetts to the UK Science Park Association

本文:

ビジネス・イノベーション・技能省(BIS)の2014年7月10日付標記報道発表によると、英国サイエンスパーク協会設立30周年を記念して開催された祝典行事においてデイヴィッド・ウィレッツ(David Willetts)BIS/大学・科学担当大臣(当時)が演説を行ったところ、内容を抜粋要約して以下に記す。

英国サイエンスパーク協会(UK Science Park Association: UKSPA)は1984年に誕生した。当時、イノベーションの中核にいた大学が知識をベースとしたビジネス時代の到来を実現しようとしており、英国で最初のサイエンスパーク - ケンブリッジとヘリオット・ワットの2か所 - が大企業向けの業務を提供し始めた。ただ、UKSPAのヴィジョンは、より小規模のスタートアップ企業の立ち上げや成長企業の支援に関するベストプラクティスを共有することだった。もちろん今は非常に多様なサイエンスパークがあり、一概に分類することはできない。サイエンスパークのみならず、イノベーション・キャンパス、テクノロジー・インキュベータ、イノベーション・センター、リサーチ・パーク、テクノパークがあり、その大小にかかわらず中核的研究拠点に隣接した成長企業を支援するという基本的ミッションはどれも同じである。

[公共部門研究施設]

歴史的に見て、我々がイノベーションにおいて認知している弱点への対処法の一つは、公共部門の研究施設を設立することであった。その中には各省が所有しその政策決定に役立っているものもある。たとえば国防省は国防科学技術研究所(Defence Science and Technology Laboratory: DSTL)を所有し革新的な科学技術を確保することで、英国の国防・安全保障に貢献している。また相当数の研究施設が、いずれかの研究会議が所有し責任を持つ機関である。

このような研究機関の中に公共部門での運営に難色を示すものもあることは承知している。特に研究会議傘下機関において懸念が高まっており、これら機関は行政上の障壁が重要な科学の行く手を塞いでいると感じている。包括的に合意された支払い枠組の範囲内での支払いに関してさらなる柔軟性が求められているが、そのような支払いの柔軟性については話し合う余地がある。それ以外の不満としては、調達に自由度がないことで、科学者が新しい設備の設計に関与している場合などにある。たとえば科学研究用の高性能計算にIT調達に関する政府の標準規則を適用するのは困難であるが、調達規則ではそのようなケースを認識する必要がある。

現時点では、これら機関の中に、上記のような制約を回避する唯一の方法が公共部門を離れて大学または民間組織の一部になることだと考えているものもある。しかしながら米国やドイツと異なり、公的研究機関がきちんと機能する体制を政府が提供できないとなると、英国の科学基盤は実質的に弱体化すると考える。したがって公共部門での優れた研究を継続して実行できるように、不必要なお役所仕事を減らして研究会議傘下の機関にさらなる自由度を与える方法を探りたい。

政府は、公共部門研究施設の今後のビジネスモデルを検討する際に使用する新たなガイドラインを策定したが、この中で特定の機関を検討対象とする場合に適用される新たな指針を導入した。これはマンチェスター・イノベーション研究所の専門家の助言に基づくものである。それによると関係各省は、当該研究機関の方針、規制上・緊急時の果たすべき役割、特別な科学技術能力、設備・資源、地方・国・国際レベルにおける広範な経済的役割について考慮する必要がある。このような要素を考慮に入れることで、英国の科学能力の向上やイノベーション牽引に重要な貢献をする各組織の将来について、より適切な長期的判断を下すことができる。

[イノベーションの支援]

ここ数年、技術戦略審議会(Technology Strategy Board: TSB)による投資が実質的に増えている。最近の分析によると、2010~2011年及び2013~2014年の間で、TSBの中核的プログラムの全領域での企業に対するファンディングはほぼ140%増加しており、1億5,200万ポンドから3億6,200万ポンドになった。我々は米国が成功している統合型方式のイノベーション支援を構築しようとしている。事実、最近の数字は10億ポンドの研究資源投資に対して、米国ではスピンアウト企業が18社生まれているのに対し、英国では30社を生み出している。しかし企業をあまりせっかちにスピンアウトさせることの危険性も我々は理解している。

政府は、英国が世界のトップクラスにあるか、適切な投資によってそうなる可能性のある「8大技術」に6億ポンドの追加投資を発表した。ビッグデータ、宇宙・衛星、ロボット技術・自律システム、合成生物学、再生医療、農学、先端材料、エネルギーの8つである。この8大技術それぞれが、特定の産業部門をも超えた拡がりを持ち、重要かつ広範囲の応用の可能性を有する。これは各研究会議やTSBの専門家による作業から抽出された結果であり、政府科学庁が行ったフォーサイト活動の結果である。現在は、それぞれの領域に大学や産業界から選ばれた強力なリーダーシップを持つグループやネットワークがあり、問題解決障壁の特定、ロードマップの策定、新たな研究協力の構築に役立っている。

イノベーションに最も適した環境はクラスター(clusters)であることが多い。クラスターに関する最近の報告書によると、経済的に重要なクラスターとして特に注目されている31か所では、英国企業の8%を擁し、英国の生産高の20%を産み出している。

政府が現在重点を置いているのは、研究開発・イノベーション協力を牽引する次の5大イニシアチブである。

・カタパルト技術センター: 研究界と産業界を一体化して、技術の事業化を支援する
・カタリスト研究開発ファンディング: 作業現場と市場との間の大きな溝を埋め橋渡しをすることで、プロジェクトを可能な限り商業的に実現可能なものに近づける狙い
・跳躍台(Launchpad)コンペティション: TSBが実施するコンペティションで、設立間もない野心的な中小企業が対象
・研究協力投資ファンド: 大規模プロジェクトへの助成
・大学企業ゾーン: 一定数の新規ハイテク新興企業を擁する新たな事業領域に対する投資ファンディング

[DW編集局]