[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学アカデミー(NAS)
元記事公開日:
2014/07/24
抄訳記事公開日:
2014/09/05

NAS報告: 福島第1原発事故から、原子力発電所の危険性に関する新たな情報を積極的に模索・活用する必要性が浮き彫りになる

Fukushima Daiichi Nuclear Accident Underscores Need to Actively Seek Out and Act on New Information About Nuclear Plant Hazards, Says New NAS Report 

本文:

全米科学アカデミー(NAS)の2014年7月24日標記ニュース記事の概要は以下のとおり。

議会が定めた最近のNAS報告では、2011年の福島第1原発事故から得られた教訓を包括的に見ると、原子力発電所の認可や規制においては原発の安全性に影響を及ぼす潜在的な危険要因に関する新たな情報を積極的に模索・活用する必要があるとしている。本報告書を執筆した委員会は日本の事故原因を調査し、米国における原子力発電所の安全管理や原発事故への現場から離れた遠隔地からの緊急対応方法の改善に関して、指摘事項および提言事項を特定した。

福島第1原子力発電所の現地要員は勇気と忍耐力を持って事故対応に当たっており、その行動が外部への放射性物質発散の大きさ、深刻度を小さくしていると考えられる、と委員会は述べている。しかしながら、発電所の管理、設計、運用体制に関連するいくつかの要因が、発電所要員のさらなる業務達成を妨げており、事故の全般的な深刻度を増す結果となっている。

米国やその他の諸国における原子力発電所の運用・規制では、福島第1原発事故を受けて、原発システム、運用手順、運用訓練の改善に向けて有用な施策を実施しようとしている。米国の原子力産業規制当局である米国原子力規制委員会(USNRC)がこのような施策を実行しているが、本報告では個々の原子力発電所システムの利用可能性、信頼性、冗長性、多様性の改善に特に注意を払うよう提言している。

・機器・安全システム制御用のDC電源
・電力喪失時の発電所の状態をリアルタイムに予測する手段
・原子炉の熱除去、原子炉の減圧、格納容器換気システムとその使用手順
・炉・格納容器・使用済み燃料プール内の、重要な熱力学的パラメータ(温度、圧力など)の監視機器
・原子炉建屋内などの水素監視および軽減措置
・現場および現場外の放射線測定機器、安全監視
・広報・リアルタイム情報システム

さらに米国の原子力発電所の回復力(レジリエンス)改善について、報告書では次の提言をしている。

・米国の原子力産業およびUSNRCは、リソースの利用可能性を高めることのほか、予期しない複雑な状況処理へのアドホックな対応の展開・実行に関する運用などの運用者訓練に特段の注意を払う必要がある。
・米国の原子力産業およびUSNRCは、原発の構造・構成要素の設計に疑念が生じたり重要な安全機能の喪失に至る可能性のある事象について、リスク評価能力を強化する必要がある。このような努力の一部は、地震、津波、その他地理的に拡散する洪水、地磁気擾乱など、地理的に広範囲の地域や複数の原子力発電所に影響を及ぼす可能性のある事象に焦点を当てるべきである。USNRCは、方法の指導や相互評価の厳格な監理によって、このような努力を支援する必要がある。
・USNRCは上記能力の強化によって、原子力安全規制にさらに新しいリスク概念を取り込む必要がある。
・USNRCおよび米国原子力産業は、強力な安全行動様式を常に監視・維持するとともに、原子力安全の評価と改善の努力について、透明性を高め広報の機会を増やす条件を検討する必要がある。

[DW編集局]