[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
大統領科学技術諮問会議(PCAST)
元記事公開日:
2014/10/10
抄訳記事公開日:
2014/12/09

国家ナノテクノロジー・イニシアティブの第5次評価に関する報告書

REPORT TO THE PRESIDENT AND CONGRESS ON THE FIFTH ASSESSMENT OF THE NATIONAL NANOTECHNOLOGY INITIATIVE

本文:

2014年10月10日、大統領科学技術諮問会議(PCAST)は、大統領および議会に宛てた標記報告書を発表した。国家ナノテクノロジー・イニシアティブ(NNI)は米国におけるナノテクノロジー開発に関する分野横断的国家構想である。PCASTはNNIのレビューを5回行っているが、PCASTの報告書としては今回が3回目である。

全般的な評価の過程においては、まず第1にPCASTが2012年のNNIレビューで行った勧告への対応についてレビューした。この勧告の中核には、ナノテクノロジー指定構想(Nanotechnology Signature Initiatives:NSI)に対するファンディングの強化があった。勧告とは裏腹に、NSIに対するファンディング全般には変化がないこと、さらに太陽エネルギーの集積・変換、ナノ製造技術、ナノエレクトロニクス(2011年に設定された当初3件のNSI)に対するファンディングは実際には減少していること、提示されている2015年度のNSI予算は2011年度予算から28%ダウンしていることが判明した。また3年ごとにNNIのレビューを行っている全米研究会議(NRC)の委員会は、元々のNSI予算の減少に加えて、NSIは参画機関の共通の投資対象領域の特定には有効な手段であるが、NNIの長期的構想実現の手段としては効果的に働いていないと指摘している。

連邦政府は2015年度に15億3700万ドルのナノテクノロジー・ファンディングを提示しており、これは2014年度のファンディングとおおよそ同等の額である。ナノテクノロジーにおける国際的な先陣争いは多くの先端領域において拡大しており、米国はナノテクノロジー研究では傑出しているが、多くのナノベース製品の製造に必要不可欠なインフラやマンパワーの開発では諸外国に遅れをとっている。PCASTの今回の2014年レビューは、ナノテクノロジー分野が重要な移行期にあり、NNI2.0と呼ばれる第2期に入っているとの前提に立っている。この次なる技術世代には、ナノスケール・コンポーネントから学際的なナノ・システムへの進化、そして基礎研究ベースのイニシアティブからナノテクノロジーの迅速な商用化の確保にも焦点を置いたイニシアティブへの変動が見られることになる。

連邦政府機関は投資・活動の領域としてナノテクノロジーを重視してはいるが、連邦政府の活動全体が(別々の個別条項の予算権限を)一体化・集中化した助成プログラムではないことを認識することが重要である。PCASTの2014年レビューの主たる結論では、ナノテクノロジー研究への投資や連邦政府の包括的イニシアティブの維持により米国がその見返りを得ることができるためには、連邦省庁間のプロセス、科学技術政策局(OSTP)、さらに各省庁自身が、基礎・応用研究の支援・報告に留まらず、技術を商品に変える計画、調整、指導の枠組を構築して、ナノテクノロジーに関する計画の取り組みを進める必要がある。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]