[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
米国科学振興協会(AAAS)
元記事公開日:
2014/12/17
抄訳記事公開日:
2015/02/13

2015年度包括予算の科学技術ファンディングに関するさらなる詳報

Additional Details on S&T Funding in the Omnibus

本文:

米国科学振興協会(AAAS)の2014年12月17日標記記事では、すでに議会を通過して大統領も署名した2015年度予算について、主要省庁の科学技術研究開発予算について詳述している。以下は科学技術研究開発関連の主要5省庁の2015年度予算の特徴(特に増加分)を抽出したものである。

[国防総省(DOD)]

DODの2015年度基盤研究開発予算は667億ドルで、1.3%の増。またこのより広範な研究開発予算の中で科学技術は141億ドルになる。陸軍省の研究開発は全体的に削減され、一方海軍省の研究開発は10億ドル以上伸びており、空軍省は現状維持。

基礎研究および先進技術の予算はいずれも前年比5%以上の伸びで、いずれもペンタゴンの要求よりはるかに高くなっている。基礎研究は1億1200万ドル増加する。国防研究科学プログラムおよび大学共同研究イニシアティブはいずれも確実な地歩を固めており、後者は全体で前年比12.3%の増。医療技術、航空機・航空宇宙、高性能コンピューティング、製造技術、材料科学など各分野にわたる非常に多くの先進技術プログラムが強化されている。

2015年度予算では陸軍省の小中学生向け「STEM」パイロット・プログラムや地方のインキュベータを巻き込む技術移転パイロット・プログラムも確保されている。

国防医療プログラム(Defense Health Program)による医学研究は前年比11.5%増。エボラ対策研究では、9500万ドルが国防高等研究計画局(DARPA)と化学・生物学国防プログラム(Chemical and Biological Defense Program)との間に分配されている。

[国立衛生研究所(NIH)]

NIHは全体で前年比僅か0.5%増の303億ドルを獲得。国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)もエボラ関連研究・臨床試験に2億3800万ドルの配賦を受け、抗生物質耐性菌対策で疾病管理センター(CDC)その他の連邦機関と協働して行動計画を実行するよう求められている。

個別の研究所で唯一インフレ率を超えた(エボラ関連を除く)のは国立老化研究所(NIA)で、アルツハイマー病の研究で2.4%の増となった。「BRAIN」イニシアティブで国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)および国立精神衛生研究所(NIMH)が、また小児科研究の共有基金が1%~1%強の増となっている。

[エネルギー省(DOE)]

DOEの研究開発は2015年度は117億ドルに達し、3.1%の増となる。この数字は国家核安全保障局(NNSA)での獲得予算が牽引しており、科学局のファンディングは変化がなく、エネルギー技術プログラム予算は伸びが緩やかでばらつきがある。包括予算の最終版ではほとんどの領域で全般的に要求を下回っている。化石エネルギー、原子力研究開発プログラム、核融合、核不拡散研究開発は、要求を上回った数少ない例である。

科学局ではエクサスケール・コンピューティングなどに関与する先進科学コンピューティング研究(ASCR)予算が前年比で大きな伸びとなった。SLAC国立加速器研究所の線形加速器コヒーレント光源 IIおよびミシガン州立大学の希少同位体ビーム施設の建設ファンディングは、いずれも予定通り増強される。さらに核融合エネルギー科学では国内ファンディングが3.7%増となる。

科学以外では、エネルギー技術プログラムで予算の伸びの大きい例がいくつかある。相対的に伸びの最も大きいのは、風力、地熱、先進製造技術で、2015年度予算では4つのクリーン・エネルギー製造技術研究所を設立する。原子力および化石エネルギーの研究開発予算の2014年度からの伸び率は控えめである。NNSA関連の一部の研究開発や建設プログラムの予算は程度は様々であるが伸びている。

[米国航空宇宙局(NASA)]

NASAの2015年度予算は総額180億ドル。前年比2.1%の伸びで、要求に対しては3.1%(5億4900万ドル)の増。科学ミッション局や宇宙船開発など大型プログラムの多くがこの傾向を辿っている。

程度は様々であるが、ほとんどどのプログラムも予算増を獲得している。前年比増が最大なのは商用宇宙飛行共同事業および航空機研究であるが、いずれも15%以上である。その他前年比増が比較的大きいのは、惑星科学、宇宙輸送システム開発、宇宙技術、天体物理学などである。これらのプログラムのほとんどは政府による削減の対象になっていた。カプセル型宇宙船「オリオン」の開発に対するファンディングは前年度並みであるが、実質的には大統領の要求よりは大きい。

[国立科学財団(NSF)]

NSFの2015年度予算は73億ドルで、前年比2.4%増、要求より1.2%の増である。

NSFファンディングの大半を占める研究・研究関連業務予算は、昨年度より1億2500万ドル増加している。政府は小規模の削減を提案していたが、立法府は特に神経科学の活動を採用した。教育活動も強化されている。進行中のNSFの3つのプロジェクト「ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡」、「大型シノプティック・サーベイ望遠鏡」、「全米生態観測施設ネットワーク」の建設ファンディングは満額確保されている。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]