[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
米国科学振興協会(AAAS)
元記事公開日:
2015/05/13
抄訳記事公開日:
2015/07/02

STEM技能労働者の需要を満たすには教育が鍵となる

Panelists Cite Education As Critical to Meeting Demand for STEM-Capable Workforce

本文:

2015年5月13日付の米国科学振興協会(AAAS)による発表記事の概要は以下のとおりである。

米国の労働者の約20%は現在の仕事に科学、技術、工学及び数学(STEM)の専門知識が必要と答えていて、今後その数は増加する事が予想される。科学技術政策に関するAAASフォーラムにて専門家はこのトレンドについていくためには教育の改善とカレッジ(college)進学の門戸開放が鍵になると述べた。

米国の労働者で仕事上少しでもでもSTEMの知識を使用する人口は着実に増加している。首都ワシントンで4月30日から5月1日に開催された科学技術政策に関する第40回AAASフォーラムにおいて複数の専門家がAAASの聴衆に訴えたところによると、資格要件を満たす労働者を充分な数確保する事、STEM関連の職種で少数派グループの参加率を向上させる事を保証するには、より良いカレッジ進学前教育の提供、カレッジ教育及びSTEMトレーニングの門戸開放の向上、及び科学及び工学を習得した労働者の追跡調査の改善が必要である。

STEM労働者の3分の1以上は科学又は工学の学位を取得しており、これらの技術は幅広く利用可能なため労働者にとって今では更に貴重なものになっている。「科学と工学の学位を取得し、習得後直接同じ専門領域の職に就くという人々の「パイプライン」の他にも、それらの仕事に至るまでにより多くの機会がある」と国家科学審議会(National Science Board, NSB)の副会長でオクラホマ大学研究担当副学長でもあるKelvin Droegemeier 氏は語った。STEMの技術を習得すると、長い職歴において様々なSTEM職に就ける能力を獲得できる。STEMの学位はキャリアパスへの門戸を解放するが、必ずしも学位を取得しないでも一部のSTEM技能を習得するだけの人々を含めて、STEM技能を有する労働人口を育成する事を考えねばならない。最新のNSB報告書では約600万人に上る米国の労働者が科学又は工学系の職を持ち、そして約1,950万人が科学又は工学の領域における学士以上の学位を取得している。しかし米国の1億4,250万人の労働者の内2,600万人(約20%)が仕事上相当なSTEM専門知識を要求されるとした。この数値は新しい分野が創造され、米国経済が発展するに連れて今後増大すると予想されるが、自動化により一部のSTEM関連職は減るかもしれない。報告書は、求人と資格を有する労働者の過不足は、専門領域と地理的な条件により変わるとしている。

STEM労働人口を増やすには高等教育への門戸解放が鍵となる。学卒者の半分はコミュニティ・カレッジに在学しているが、4年制の学位コースに編入・転向したり終了する前に退学してしまう。コミュニティ・カレッジ制度を強化し、より効果的に4年制施設並びにビジネス事業主と結びつける事が出来ればSTEM経路の強化と広範な参加に向けて大いに役立つ。学資支援の申請につきまとう困難、書籍を購入するまでに支援金を入手する事や、仕事や家族に対する義務と学究のバランスを取る事などの教育に対する非学問的な障壁は、学生がそれらを克服できるように学校と周囲の者が支援できる問題である。

カレッジで数学の補習教育を必要とするような学生は学位を獲得できる可能性が低いと幾つかの研究は示している。STEMとそれらの分野において初歩的な計算能力や数学能力が要求される事を考えると、高校3年において数学に力を入れる事は支出に見合う大いなる価値を与える。又、より良きカレッジ進学前教育を行う事はSTEM職におけるマイノリティの数を増やすのに役立つ。人種による高校卒業の差分確率が存在し、人種別のカレッジ進学率に影響している。またカレッジ教育と大学院学位取得費用の増大は、STEMにおいて数が少ない人種の学生に取ってはより大きな問題である。学費不足の問題はSTEM分野におけるマイノリティの学生に取って大きな障害となる可能性がある事は知られており、大学院生にとってそれらの障壁は益々大きくなっている。

NSB報告書の結論として、STEM学位を有する従業員はより貴重な存在となり、例えSTEM職に就かない場合でも国家の競争力を改善する。米国勢調査局のデータに基づいた報告では、STEM学位を取得している人の多くは自分の学位が業務に関連すると回答していたにもかかわらず、約半分は非STEM職で働いていた。現代人は職歴を積み重ねる中で多くの異なった職に従事する傾向にあるから、学士取得後10-15年間追跡調査した追加データが有れば、労働経済学者が労働者の決断の背景を理解する一助になるだろう。学生が将来STEM分野で働くために必要な技術を教えている事を確認するためにも、卒業生を長期追跡する事によって大学・大学院がその授業内容を学生がSTEM分野で必要とするスキルを得られるように最新のものにするのに役立つ。

学生が終局的にどこに落ち着くか分からないと授業内容の改善は困難であり、又、全ての博士課程の学生は教職に就くものであるという思想に教職員が囚われていると、改善は難しい。最後にフォーラムの聴衆からパネルへの発言として、「科学、工学のカリキュラムとその教え方に多くの障壁が残っている点に注目すべきで有って、教育者の固定観念を門番型コースから玄関口型コースに変えていく必要がある」との指摘があった。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]