[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
研究・イノベーション総局
元記事公開日:
2015/08/18
抄訳記事公開日:
2015/09/10

EU 助成のプロジェクト、癌の個別化治療で革命をもたらす

Bring on the revolution: personalised medicine for cancer treatment

本文:

欧州委員会研究イノベーション総局は、2015年8月18日付で、標題のプロジェクト紹介記事を発表した。以下にその概要を紹介する。
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<要約>
研究者たちは、癌治療におけるオーダーメイド医療の実現に向けた道を切り開いている。これは、最も困難な状況にある癌を対象にした新しい免疫療法の提供を意味している。本アプローチに沿って、EU助成のMERITプロジェクトは、医師の標的を定めた個別化治療の実施を可能にする新技術を開発している。現在は、この手法の可能性を実証するために、8人のメラノーマ患者に対する治験を行っているところである。

<本文>
EU助成のMERITプロジェクトは、患者毎に異なる治療標的を利用する新しい技術を開発しており、潜在的にはトリプルネガティブ乳癌も含む全ての癌患者に対する標的を定めた個別化治療を提供するものである。

●個別化治療の導入
癌は、突然変異体を伴って、免疫反応を引き起こす多くの腫瘍特異性抗原を発現させる。問題なのは、患者毎に抗原と突然変異のパターンが異なるため、既存の薬品開発には共通因子がなかったことである。

MERITプロジェクトは、これらの突然変異体を特定するこの最先端の次世代シーケンス技術を活用し、患者の個別サンプルから治療ワクチンを製造することを可能にする仕組みを開発している。

また、もう一つの取り組みは、どの突然変異体を標的として選択すべきかを知ることであり、これは本プロジェクトが突然変異体の優先順位付けを可能にするアルゴリズムを開発してきた理由である。プロジェクト・コーディネーターSahin氏によれば、8名のメラノーマ患者に対する治験を通じて、この方法の安定性はすでに実証されてきている。

●次のステップ
次のステップは、トリプルネガティブ乳癌患者に対する治験の実施と、商用アプリケーションの開発である。コストは、どんな治療の実行可能性においても重要な要素であるが、克服できないものではないとSahin氏は考えている。

また、Sahin 氏は、MERITのプロジェクトの終了時(2016年5月予定)には、この新しい治療法の実行可能性と安定性を実証し、そしてこれが最も重要なことだが、患者が新しい治療に反応を示している姿を見ることができると期待している。「私達がやっていることは革命的であり、治療的価値を向上させ、最終的には個別化治療のコンセプトを紹介するものになると、私は信じています。」

<プロジェクト詳細>
・ プロジェクト名:MERIT
・ 参加国:ドイツ(コーディネーター)、フランス、ベルギー、スイス、スウェーデン
・ 総コスト:779万4,995ユーロ
・ EU助成額:596万4,250ユーロ
・ 期間:2013年6月-2016年5月

[DW編集局]