[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
米国科学振興協会(AAAS)
元記事公開日:
2015/12/17
抄訳記事公開日:
2016/03/03

ゲノム編集ツールCRISPRがブレークスルー・オブ・ザ・イヤー2015を受賞

Science Selects CRISPR Genome –Editing Tool as 2015 Breakthrough of the Year.

本文:

2015年12月17日付の米国科学振興協会(AAAS)によるゲノム編集ツールCRISPRに関する発表記事の概要は以下の通りである。

サイエンス誌はCRISPRと称されるゲノム編集方式をブレークスルー・オブザイヤー2015に選定した。この技術は過去にサイエンス誌の年間ブレークスルーで二度次点候補に挙げられており、その後昇格して受賞となったのは初めてのケースである。

サイエンス誌が今年のブレークスルー年間候補のトップに置いた要因としては、その潜在的な可能性について新事実が示された事が挙げられる。それには、マラリア撲滅のために蚊のゲノムを再プログラムできる様に設計された念願の「遺伝子ドライブ」の創生、初の意図的なヒト胚DNAの編集、およびCRISPRによる(CRISPR-driven)ブタゲノム中62箇所のレトロウイルスDNAコピーの欠失が含まれる。最後のDNAコピーの欠失は、臓器の提供を待ちわびている患者へのブタ臓器の利用に道を開く動きとなる。

受賞の基となった研究成果は多岐にわたりその一部はサイエンス誌にも掲載されている。CRISPRは競合する他のゲノム編集方式に比べて、狙った位置に正確に遺伝子を配置する能力に優れており、加えて低コストで使い勝手が良いと評されている。そしてこれらの特長により、何千もの研究室、高校生やバイオハッカーなどが分け隔て無くなく、この3年目の技術を活用している。もし科学者が遺伝子操作を夢見るならば、CRISPRがそれを実現すると言っても過言では無い。

CRISPRは2013年のサイエンス誌の特集で取り上げられ、この技術の歴史と潜在的可能性を垣間見る事が出来たが、2015年に最初のミバエでの遺伝子ドライブの論文が発表されると、これは今後単に生物学とどの様に取り組むかを変える事になる以上に、社会と生態学を変えてしまうかも知れないと編集長のトラビス氏は述べている。この技術に対する期待は、その植物、動物及びヒトに対する利用の規制をどうすべきかの議論と平行して行われ、ワシントンで開催された国際サミットでのヒトゲノム編集のトピックでも議論された。今後2年間でCRISPRは、免疫療法が癌患者にもたらしたのと同様の、揺るぎないレベルの興奮と期待を生物学の様々な分野にもたらす事になると予想される。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]