[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
国立衛生研究所(NIH)
元記事公開日:
2015/12/16
抄訳記事公開日:
2016/03/17

NIH、2016~2020年度戦略計画を発表

NIH unveils FY2016–2020 Strategic Plan

本文:

2015年12月16日付の国立衛生研究所(NIH)の標記発表によれば、NIHはこのほどNIH全般にわたる2016~2020年度の戦略計画を明らかにした。発表の概要は以下のとおりである。

2016~2020年度戦略計画は今後5年間のNIHの優先課題の指針として役立てられる。生命システムの機構と行動に関する基礎的知識を深め、健康増進、長寿化、疾病や障害の軽減の為に応用すると言う任務の追及にあたり、本戦略では、今後必要性が高く相互に関係性のある4つの目標に焦点を当てている。

1. 基盤的科学、治療、健康増進、疾病予防における生物医学研究の機会の増進
2. イノベーションの促進に向けた、研究開発の迅速化、疾病の負担や疾病根絶の価値の考察、希少疾患に代表される研究機会を高める、NIHの優先課題の設定
3. 優れた生物医学研究要員を採用・雇用し、要員の多様化と協力関係によるインパクトを増進し、厳格性と再現性を確保し、ファンディング決定の通知方式を最適化し、イノベーションを奨励し、予防的リスク管理に取り組みによる科学的管理の強化
4. 生産物と成果物の均衡を図る「科学の科学」を展開し、要員分析を行い、ピア・レビューを継続的に実施し、厳格性と再現性の強化措置を評価し、事務的な負担を軽減し、意思決定におけるリスク管理の有効性を追跡することで、成果に向けた管理を行うことにより、連邦政府研究機関として秀逸性の維持

NIHは今後5年間に次のような業績や進歩の実現を期待する。

・精密医療(precision medicine)の応用により、何万ものがん患者が生存期間の延長を経験することになる。
・複数の型のインフルエンザウィルスに対して広範な抗体結合反応を誘導する候補ワクチンの臨床試験を実施する。これは誰にでも使えるインフルエンザワクチンに向けた重要なステップである。
・NIH支援の研究では、健康のバランスを崩したことのある人々の健康増進と疾病予防を目的として、状況適合型行動による効果的・社会的介入方法を開発する。
・実世界の臨床環境における薬理ゲノミクスの応用は、複数薬剤使用の場合の効果の改善につながる。
・HIVの新規ワクチンの極めて重要な有効性試験は、2016年南アフリカ共和国で開始予定であるが、HIVの感染に対して少なくとも50%の防護効果をもたらす。
・NIH支援の臨床試験では、臨床的に有効と考えられている治療介入の多くが実際には効果がないことを、証明することになる。
・構造生物学に関する斬新で新しい方法は薬剤のスクリーニングや最適化に革命をもたらす。
・NIH支援の研究は、少なくとも12件の希少疾患に対するFDA承認の治療法に直接的に貢献する。
・特定のモバイル・ヘルス(mHealth)技術の応用は、それらが健康増進や疾病予防の強化に活用できると言う厳密な証明になる。
・血中アルコールのレベルをリアルタイムで監視する装着型バイオセンサーが開発され、アルコール関連の傷害や疾患の予防に効果を示すことになる。
・麻痺状態を治して一部の正常機能を回復する技術が、脊髄損傷患者に使用可能になる。
・呼吸器合胞体(RS)ウィルスに対するワクチンが効果確認のためのフィールド試験にかけられ、子供の肺炎の主要な原因の解決策が期待できる。
・人工膵臓に関する研究は、低血糖症の危険を伴わないで糖尿病の管理の顕著な改善を示すと言う先進的な試行につながる。
・NIHはそれ自体に(最善の生物医学研究支援方式を厳密な方法で修得・実行する場合に)科学的方法を適用するモデル機関として認知されることになる。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]