[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
英国王立協会
元記事公開日:
2016/04/26
抄訳記事公開日:
2016/06/17

英国の研究システムを構成する5大要素

5 key building blocks of the UK research system

本文:

王立協会(Royal Society)の2016年4月28日付記事では、イアン・キート政策顧問が先ごろ学術界との共催で行われた政策(PolicyLab)議論を踏まえて標記内容を発表している。2015年秋のスペンディング・レビュー(2016~2020年度を対象とした政府全体の予算計画)において、ポール・ナース卿による「英国の研究会議に関するレビュー」に盛られた提言の実行が公約されたことが背景にある。概要は以下のとおり。

1. 研究会議の統括

ナース・レビューでは、既存の7つの研究会議の上位に位置するものとして”Research UK”なる組織の創設を提言している。これにより研究界全体のより適切な調整とベスト・プラクティスの確立が可能になり、政府に対しては科学界共通の強力な立場を一本化する正式な組織とすることを狙ったものである。
上記政策議論では、各研究会議の独立性、自律性は維持されるべきことが強調されたほか、Research UKに付託される権限および統治方法が今後の目標達成の決め手となること、Research UKに吸収すべき特定の組織(HEFCE、Innovate UKなど)およびResearch UKと個々の研究会議との間の境界・調整点を確定する必要があることといった議論があった。
Research UKのもう一つの目的は分野横断的・学際的研究の可能性を高めることにあるが、上記議論ではResearch UKがその目的に適うとしている。

2. 科学に関する政府代表組織の設置

政策決定者と科学界との間のより広範な取り組みを確保するには、科学の範囲をビジネス・イノベーション・技能省(BIS)から政府全体に拡大する必要があるとナース卿は強調している。これを達成するための主要要素として政府全体の閣僚委員会を提案しているが、その設置はResearch UKの設置より困難であることをナース卿は認めている。

3. ピアレビューの改善策

研究の評価プロセスでは研究者が実行する広範囲の活動を認識し、個々の研究者の仕事に対して適切な実績評価をすべきであるとの議論があった。さらに、医学アカデミーの”Team Science”報告に見られるように、ピアレビュー制度の簡素化を可能にする方法が多数あるとの議論があった。その中には、全実績に対してタグ付けする ORCID(Open Researcher and Contributor ID)の活用や発表論文に対して実績評価を与える”cast list”方式の活用などがある。
また、研究者が行う大量のピアレビューが過重負担になりつつある現状を踏まえ、より広範でより多様な大勢のレビューアとの連携が役に立つとの提案があった。

4. ドゥアル・サポートの維持

研究ファンディングに関して、研究会議経由および(研究の質に基盤を置く)QR ファンディングによるドゥアル・サポート・モデルは堅持すべきであるとの議論があった。また、この両方のファンディングの流れを Research UK の管轄に組み入れると、一方が他方の犠牲となって変容するリスクがあるとの懸念も示された。

5. 研究とイノベーションの関係

Innovate UKがResearch UKに組み込まれることの是非について、Innovate UKは研究会議の商業化部門と化してはならず、また両組織間の関係が近すぎると両者の有効性を制限してしまう可能性があるとの議論があった。ナース卿は、イノベーションを牽引する研究というのは研究会議由来のものばかりではないと指摘した。またインセンティブと行動という側面を含めて組織を超えた議論が必要との意見が出た。

[DW編集局]