[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
国防高等研究計画局(DARPA)
元記事公開日:
2016/05/26
抄訳記事公開日:
2016/07/07

機械学習の効率改善の為の理論的基礎および原理的限界解明への挑戦

Fun LoL to Teach Machines How to Learn More Efficiently: DARPA seeks mathematical framework to characterize fundamental limits of learning

本文:

2016年5月26日付米国国防高等研究計画局(DARPA)による標記報道発表の概要は、以下のとおりである。

人工知能(AI)に知能を植え付けることは簡単ではない。現在の機械学習技術は、膨大なトレーニングデータおよび計算資源ならびに時間のかかる試行錯誤法に依存している。機械学習の効率にはまだ改善の余地がある。このことに疑いはないが、どこまで改善できるのかはわかっていない。特定の学習問題に対して達成できることの限界やその限界の導き出し方については、まだほとんど知られていない。これらの疑問に対する答を見つけるため、DARPAは、機械学習の原理的限界(Fundamental Limits of Learning (Fun LoL))プログラムを発表した。Fun LoLプログラムの目的は、より効率的な機械学習システムの設計を可能とする理論的基礎および機械学習の原理的限界を研究し明らかにすることである。

今日の機械学習では、タスク(機械への要求事項)が少し変わっただけでも全く新しい機械学習プロセスの開発が必要になるという弱点がある。例えば、碁のルールをほんの少しでも変えたら、機械は既に蓄えたデータを活用できなくなる。そのため機械学習プロセスをはじめから検討し直さなければならなくなり、ルール変更により新たに想定しなければならなくなった数千万もの指し手のデータセットを再度コンピュータに読み込ませなければならない。

機械学習プロセスを改善し、このような弱点を克服することは、国防総省(DOD)にとって緊急の課題である。DODの専用システムは、新しいタスクのための機械学習プロセスを開発するにあたってその都度必要となる大規模なトレーニングセットを備えておらず、高コストな試行錯誤法に頼ることもできない。したがって、複雑化する脅威から国を守るためには機械が新しい問題に迅速に適応し、学習できることが必要であり、そのためには、機械が事前に学んだ概念を創造的に導き出す能力を持つことが重要である。

Fun LoLプログラムは、次のような疑問への答を探す上で役に立つ数学的フレームワーク、アーキテクチャーおよび方法に関する情報を探索する。
● 所与の精度を達成するためのトレーニングに必要な事例の数はいくつか?
● サイズ、精度、処理能力等の諸要素の間の関係について、何が重要なトレードオフか?
● 所与の問題に対する所与の学習アルゴリズムは、どれくらい“効率的”なのか?
● ある学習アルゴリズムで達成可能と期待される性能は原理的な限界にどの程度近いのか?
● トレーニングデータに含まれるノイズと誤差は機械学習の性能にどの程度影響するのか?

DARPAのFun LoLプログラムではこの問題の新規解決法につながる情報を求めている。関連する技術分野には、情報理論、コンピュータ科学理論、統計学、制御理論、機械学習、AIおよび認知科学が含まれる。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]