[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
元記事公開日:
2016/05/17
抄訳記事公開日:
2016/07/12

遺伝子組み換え作物と 従来の品種改良品との差が不明確に

Distinction Between Genetic Engineering and Conventional Plant Breeding Becoming Less Clear, Says New Report on GE Crops

本文:

2016年5月17日付の全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)の標記発表の概要は以下のとおりである。

NASEMが行った広範囲に及ぶ調査報告によると、新しい遺伝子組み換え技術と従来の品種改良方式との間にかつて存在した明確な区別は不明確になりつつある。さらに、健康や環境に対する微妙で長期的な影響の検出が元々困難であることを認識した上で、調査委員会は、現在市販されている遺伝子組み換え作物と従来の品種改良作物との間で、人の健康に対するリスクに有意差を発見できなかったのみならず、遺伝子組み換え作物と環境問題との因果関係に関する決定的な証拠も発見できなかった。しかしながら、現在の遺伝子組み換え作物に対する反対運動の高まりは、農業における重要な問題となっている。

作物の新種の段階的規制プロセスでは、育種のプロセスよりもその作物の特性に重点を置くべきであると、調査委員会は報告書で提言している。育種が遺伝子組み換え技術によるものか、あるいは従来の品種改良技術によるものかに関わらず、危険な可能性のある新しい特性(それが意図したものか否かにかかわらず)を有する新規作物種は安全性検査を受ける必要がある。作物特性のわずかな変化でも検出できる能力を劇的に向上させた新しい「オミクス」技術が、新規作物種の意図されていなかった変化を検出するのに極めて重要となる。

調査委員会は過去20年間に集積された証拠を用いて、現在市販されている遺伝子組み換え作物の否定的と言われる影響や利益とされる結果について評価した。1980年代以降、生物学者らは遺伝子組み換え技術を用いて、果物の保存可能期間の長期化、ビタミン含有量の増量、病気に対する抵抗力など特定の作物特性を生み出してきた。しかしながら唯一商業的に広く用いられている遺伝子組み換え技術による特性は、除草剤に耐えられる特性(除草剤耐性)と害虫に対して毒性を持つ特性(害虫抵抗性)の2つである。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]