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国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
元記事公開日:
2016/08/21
抄訳記事公開日:
2016/09/28

米国42603 米国アカデミーが政策決定における科学の役割に関する教育モジュールを発表

Academies Release Educational Modules to Help Future Policymakers and Other Professional-School Students Understand the Role of Science in Decision Making

本文:

2016年6月30日付の全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)による標記報道発表の概要は、以下のとおりである。

NASEMは、法律、公共政策、医学、ジャーナリズムおよびビジネスに関する高度専門職学校(professional school)の学生に科学と政策決定における科学の役割を理解してもらうため、高度専門職学校での使用を念頭に、シェールガス開発、ワクチン、法医学的パターン証拠、科学的モデルのテーマを探求する9つの教育モジュールを開発した。

これらのモジュールは、批判的思考(critical thinking)を実践する上で特に必要となる科学技術の中核的な原理をケーススタディの手法を通して明らかにしようとするもので、学生に次のような力を身に付けてもらいたいと願う高度専門職学校の教員が教育コースの一部もしくは教育コース設計のための基礎資料として使えるように設計されている。
・ 科学の基本的な原理と真理へのアプローチの仕方を理解する
・ 科学的な主張の根拠となった証拠を評価する
・ ある問題について真の科学的合意があるのか、それとも見過ごすべきでない意見の対立があるのかを見極める

これらの教育モジュールの作成は、NASEMが設置した「科学的意思決定のできる次世代政策決定者の養成に関する委員会」(Committee on Preparing the Next Generation of Policymakers for Science-Based Decisions、以下単に「委員会」という。)の下で進められた。

委員会の2人の共同委員長は、これらのモジュール作成の背景にある問題意識等についてそれぞれ次のように語った。
・ 「ほとんどの高度専門職学校の学生はキャリアを重ねていく中で科学技術に関する知識が重要な役割を果たす意思決定を迫られることがある。しかし、学生の多くは、科学の基本的な原理もしくは特定の科学的主張の妥当性を評価する方法について十分な理解がないままに卒業してしまう。」
・ 「未来の意思決定者は、科学的証拠を評価し、解釈しなければならないときがあるだろう。そのようなときに必要となる理解を深めていく出発点として、これらのモジュールが役に立つことを期待している。」

今回のモジュール作成の手順は、次のとおりであった。
・ 委員会が教育モジュール開発のガイドラインを策定した。
・ 法律分野と科学分野のコミュニティの傑出したメンバーに対して、意思決定にあたって科学に関する情報が決定的な役割を果たすような広範なテーマに関するモジュールの提案書の提出を求めた。
・ 委員会は執筆予定者と会って彼らの提案について討議した。
・ モジュールのドラフトが作成された後、委員会は提出されたドラフトについて審議して修正事項を指摘し、最後にモジュールの最終版を承認した。

委員会の目標は、未来の教育モジュール開発者のために参考となる材料を提供することである。今回開発されたモジュールは、NASEMのサイトからオンラインで無料で入手できる。

なお、今回の教育モジュールの開発は、ゴードン・アンド・ベティ・ムーア財団(Gordon and Betty Moore Foundation)と米国生物医学研究財団(National Biomedical Research Foundation)の支援を受けて実施したものである。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]