[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
国防高等研究計画局(DARPA)
元記事公開日:
2016/09/07
抄訳記事公開日:
2016/10/21

遺伝子編集研究の安全な道筋

Setting a Safe Course for Gene Editing Research

本文:

2016年9月7日付の国防高等研究計画局(DARPA)による標記に関する発表の概要は以下のとおりである。

DARPAの新規プログラムでは、急速に進歩する遺伝子編集技術分野で起こりうるリスクに対処するための一連のツールを開発している。これにより、先進遺伝子編集技術の潜在能力を引き出すことに役立つことが期待されている。「安全な遺伝子(Safe Genes)」プログラムでは、このようなツールを用いて人工的に作り出された遺伝子構成物の拡散を制限・抑止することで、重要な安全性ギャップの問題に対処するものである。

本プログラムは「遺伝子ドライブ」分野における最近の進歩に一部触発されている。「遺伝子ドライブ」は、特定の編集済み遺伝的特性を後続の世代のほとんどすべての各個体に引き継げるようにすることで、特定の生物個体群の遺伝的特徴を変更することができる。科学者らは数十年もの間、自己永続的な遺伝子ドライブの研究を行ってきたが、2012年の遺伝子ツール”CRISPR-Case9″の開発により極めて精密な遺伝子編集が可能となり、遺伝子ドライブ実験の潜在的価値が急速に高まった。

物理的生物学的封じ込め、研究の一時的禁止、自己統治、規制など従来の生物学的安全性およびバイオ・セキュリティの方策では、実際上明らかに環境への放出を意図した技術や、従来の研究機関の外で操作する利用者に広範に使用される技術については考慮されていない。「安全な遺伝子」プログラムの目標は、新たなバイオテクノロジーについて生物学的安全対策を最初から組み込み、人工の遺伝子の脅威に対処する一定範囲の選択肢を提供し、新規の遺伝子編集技術に関連して起こりうること、想定されること、脆弱なことを把握することである。

「安全な遺伝子」プログラムには3つの技術的目標がある。第1は、生命体のゲノム編集機能を空間的、時間的、可逆的に制御できる遺伝子構成物の開発。第2は、生物のゲノム編集を防止または制限して各個体群のゲノムの完全性を防護する予防・治療オプションを提供するべく、新規小分子および分子レベルの防衛手段の開発。第3は、望ましくない人工遺伝子を環境から除去して各系を遺伝子的にベースライン状態に戻す機能の開発。

本プログラムを国家安全保障の視点で見ると、遺伝子編集ツールの急速な普及(コストの急激な低下や利用機会の増大による)により生じる固有のリスクに対処することになる。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]