[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
元記事公開日:
2016/12/13
抄訳記事公開日:
2017/01/31

効果的なサイエンス・コミュニケーションに向けた研究課題の提言

New Report Recommends Research Agenda for Effective Science Communication

本文:

2016年12月13日付の全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)の標記報道発表の概要は以下のとおりである。

NASEMの最近の報告書では、特に異論の多い問題を扱う場合のサイエンス・コミュニケーション(科学についての一般市民との対話)を効果的に行うことの難しさに注目し、サイエンス・コミュニケーション当事者や研究者がその効果的な方法を特定するのに役立つ研究課題を提言している。受け側がサイエンス・コミュニケーションから何を求めているかについての最も広く使われているモデル(欠損モデル)は、単により多くの情報伝達に着目しているが、これは間違いである、と報告書は述べている。

研究の取り組みに主として必要なことはサイエンス・コミュニケーションに影響を及ぼす複雑な要因を把握することである。例えば、公衆が耳にした科学情報を処理する方法や、科学および科学に関する情報源に対する公衆の信頼に影響を及ぼす個人的・社会的要因などである。また、サイエンス・コミュニケーション当事者が彼らの目標に見合う適切なコミュニケーション方法を特定するのに役立つ研究も必要とされる。

公衆は科学情報に基づいてのみ判断することは稀で、自分独自の目標や利害、知識、能力、価値、信条も考慮に入れるのが通常である。知識に重点を置くだけではコミュニケーションの目標の達成には十分でない、と報告書は述べている。信条、価値、利害の対立が論争の中核を成す場合など、論争に直面してコミュニケーションを図る場合に、特別な複雑さが生じる。組織的な利害の声が増幅され、科学が発する信頼できる声が聞き入れられるのは困難になる。科学的コンセンサスや科学的不確実性を効果的に伝達する方法について、さらに知ることが必要である。

報告書では、科学に関する公式の対話に公衆を参加させることの重要性、(公衆が広範なメディアを通じて科学情報に遭遇する)ブログやソーシャルメディアを含むメディアの変化に対応する必要性、システムズ・アプローチによる研究の必要性、間違った情報の不正証明や訂正を伴うサイエンス・コミュニケーション実践方法研究の必要性なども指摘している。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]