[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
米国科学振興協会(AAAS)
元記事公開日:
2017/01/27
抄訳記事公開日:
2017/03/09

事実を裏付けし政策を進めるためのエビデンスの活用

Scientists Urged to Leverage Evidence to Support Facts and Advance Policy

本文:

1月26日のAAAS(米国科学振興協会)が主催したトランプ政権の最初の100日間の科学技術の概況に関するウェブセミナーにおいて、AAASのラッシュ・ホルト(Rush Holt)CEOは、急速に科学の価値が問われる政治的環境になりつつある中で、科学者および技術者には科学的知識の重要性を説き、確固たるエビデンスに基づく公共政策を知らしめる必要があると述べた。また、アメリカ・エンタープライズ研究所の常任研究者であるノーマン・オルンスタイン(Norman Ornstein)は、「この惑星やアメリカ合衆国の命運が気にかかるのなら、象牙の塔に閉じこもっている場合ではない。」と述べた。

ホルトとオルンスタインは続けて、次のように述べている。様々な学問領域の科学者が科学を擁護する最も効果的な方法は、人の健康から環境にかかわる喫緊の課題への理解を促すエビデンスと知見を、地方、州および連邦レベルで選出された議員に提供することである。例えば、連邦議会議員との関係において、科学者は、政策内容がいかに当該議員の選挙区の住人の生活に影響を与えるのかを示す事実として、科学的知見を現実的な話に変換して伝えることができる。

「私の長い経験において、これほどまで科学界の不安が高まったことはない。」と述べるなど、ホルトとオルンスタインは、現在、科学と科学者が重大な危機に直面していると表明した。さらに2人は、このような事態に対応するために、科学者は科学および科学者を擁護するような歴史を議員に対して伝える努力をする必要があると提言している。さらに、オルンスタインは、「政治家は自身のイデオロギーに合致しない事実を誤用したり、放棄したりするものだが、トランプ政権による科学的証拠に対する無視の程度は新たなレベルに達している。」と続け、科学者は虚偽の情報と証拠のない議論に対して警戒するよう求めた。またホルトは、不正確さを修正するための科学的専門知識の価値を指摘し、それを軽視することなく提供しなければならないと強調した。

オルンスタインは、トランプ政権による環境保護庁(EPA)の気候変動の科学的証拠を含むデータがレビューされていることを挙げて、「科学的情報を提供している人々を根絶しようとする政府内部での「科学者への戦争」を見守る。」と述べた。さらに、連邦による気象研究が精査を受ける可能性があり、新政権による17の連邦研究機関と連邦政府による宇宙開発計画を民営化するための取り組みが予期されると付け加えた。また、国立科学財団(NSF)は社会科学研究のような特定領域を標的として全面的な予算削減に直面するだろうと予測した。

最後にオルンスタインは、「共通の事実から始めるのではなく、根本的に真実ではないものを信じて、彼らに挑戦する人たちを非合法化しようとする権力者がいるとき、大きな問題が生じる。」と語った。また、ウェブセミナー後のインタビューでホルトは、AAASは今こそ科学のために立ち上がなければならないと述べた。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]