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国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
国防高等研究計画局(DARPA)
元記事公開日:
2017/02/06
抄訳記事公開日:
2017/03/22

ウィルス脅威の除去策:パンデミックの制止に2か月

Removing the Viral Threat: Two Months to Stop Pandemic X from Taking Hold

本文:

2017年2月6日付の国防高等研究計画局(DARPA)の標記発表によれば、DARPAではウィルス感染の拡散を60日以内に制止する核酸配列を用いたエンド・ツー・エンドの統合型プラットフォームの開発を狙っている。概要は以下のとおりである。

暗号化された遺伝子構成を用いて体内のウィルス蛋白生成を促進する感染症に対して、過去数年間DARPAの資金支援を受けた研究者らは医学的な封止策であるRNAワクチン技術に先鞭をつけてきた。このワクチン技術は、特定の遺伝的構造の利用により、体内におけるウイルスタンパクの生成を活性化させ、防衛的な抗体反応を引き起こす。DARPAはその後の取り組みとして、体内で抗体の生成を直接促進することのできる遺伝子構成の研究にファンディングを行った。DARPAはこのたびパンデミック防止プラットフォーム(P3)プログラムを立ち上げ、どのようなウィルス疾患でもパンデミック状態にエスカレートする前に発生の拡散を制止できる全体システムに関する基礎的研究の展開を狙う。

これを実行するにあたりカギとなるのが核酸を基盤とする技術で、DARPAの「予防・治療を可能にする自律診断 (ADEPT)」プログラムの下で開発された技術など、DNAとRNAを中心とする技術である。このようなツールを使用して科学者らは快復途上の患者から防御的な抗体を特定することができ、その結果、生物学的リバース・エンジニアリングを通じて、ヒトの身体に同様の防御的抗体を生成するように指令できる遺伝子構成を製造することができる。現時点の最新の抗体生成法に比べて、このような核酸「遺伝情報」は、迅速に大量な製造が可能である。

DARPAのこれまでの実績に橋渡しをし、パンデミックの脅威に対する迅速な対処を妨げている残りの障害を克服するのに、今必要とされるのは次の3つの技術領域でのブレークスルーである。P3プログラムはその3つの領域でのイノベーションを追究する。

・研究室での試験において治療の評価支援に必要とされるウィルスの培養
・感染した患者から取得した最も有効な抗体よりも優れた有効性を発揮できるように、抗体を対外での一連の急激な変化にさらすこと
・従来のワクチン投与に使われた技術は容易に転換できないので、核酸ベースの防御治療を効率的に実行する手段の開発

上記領域のすべてでブレークスルーを達成して取り込むには、免疫学、微生物学、ウィルス学、感染症学、分子生物学、医学的対策製品の開発・製造などの領域を専門とする研究者や技術者間の統制のとれた協力を必要とする。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]