[本文]

国・地域名:
ロシア
元記事の言語:
英語
公開機関:
ロシア大統領府
元記事公開日:
2017/03/29
抄訳記事公開日:
2017/06/02

北極地域の包括的開発に関する会合

Meeting on Arctic region’s comprehensive development

本文:

ロシア連邦大統領府の2017年3月29日付標記発表では、プーチン(Vladimir Putin)大統領のほかメドヴェージェフ(Dmitry Medvedev)首相やショイグ(Sergei Shoigu)国防相らも出席した、北極地域の開発に関する会合を伝えている。同会合におけるプーチン大統領の発言の概要は以下のとおり。

ロシアの北極圏は面積が340万平方キロメートルで、ロシア国土の約20%を占める。ロシア最大の天然資源の供給源の一つで、世界的にも重要な炭化水素や鉱物資源の未開拓の宝庫である。この資源はロシアだけでなく世界全体にとって貴重であるが、北極地域は国への活動規制や国の支援なしには効果的に機能しない。この地域はロシアの経済発展にとって決定的に重要な多数の鉱物資源の主要埋蔵拠点である。

北極海の深海圏には標準燃料にして約150億トン~200億トンの莫大な量の炭化水素があると予測されている。ロシア科学アカデミーの予測では、北極圏には金、石油、ガス、クロム、マンガン、白金、ダイヤモンドなど、多数の鉱物資源の大半が埋蔵されている。

北極地域の地下資源は30兆ドル強に相当する価値があると見込まれているが、その3分の2はエネルギー資源が占める。ロシア北極圏ではダイヤモンド、アンチモン、アパタイトなどの金属や鉱物、レアメタル、レアアース元素、プラチノイド、ガス、ニッケル、コバルト、銅、石油を産出している。この北極圏における既知の地下埋蔵鉱物資源全体の価値は、およそ1.5兆ドル~2兆ドルとみられているが、地下埋蔵鉱物資源の多くはまだ開拓・開発されていない。現行の開発レベルはこの地域の潜在能力を満たしていない。

北海にあるロシアの広大な大陸棚は天然資源が豊富で、ロシアの200マイル経済海域の生物学的資源と合わせて、ロシアが北海および北極海の産業開発を遂行するための長期的な構造改革に必要な条件を提供している。

2030年までに北極圏における沖合での石油生産は3.6倍増え、1日当たりの石油換算での220万バレルに達する予定で、この作業はすでに進行中である。またバレンツ海の複数地区の地球物理学的調査を外国企業と共同で行っている。2014年9月にカラ海で実施された探査では北極圏最大の油田が見つかった。このような海域での炭化水素の埋蔵量は石油換算で1,000億トン強と見積もられている。バレンツ海の地下だけで2.8兆立方メートルのガスが存在する。北極地域はまた豊富な石炭も埋蔵しており、全ての品質の石炭の予測埋蔵量は最低限でも7,800億トンと予測されている。

炭化水素の埋蔵とは別に、北極地域は銅・ニッケル原鉱、錫、白金、ダイヤモンド、金などの比類のない埋蔵拠点である。100以上の戦略的金属の鉱脈が広域の北極地域で発見されており、様々な開発段階にある。

上記に関して、天然資源や国際輸送回廊の開発から研究・環境に至るまで互いに有益な大型共同プロジェクトを遂行する目的で、ロシアのパートナーや諸外国との広範な協力関係を歓迎する。

ロシアは北極圏における存在感を確実に増してきている。同時にこの地域の社会インフラも構築されつつあり、住宅や公共施設も近代化され、北極圏の市や町の改善に向けた投資もなされている。数十件の前途有望なプロジェクトが北極圏で実行されることになっており、このようなアンカー・プロジェクトが北極地域の発展を促進する。

計画の実施には、政府、実業界、地方当局の間の調整が必要である。現在、政府が2014年に策定した、2020年までのロシア北極圏の社会経済開発に係る国家プログラムが走っているが、同プログラムは分析的な側面が強く、北極地域発展戦略の実行に必要な資金調達手段として使えるものではない。政府に対しては、この国家プログラムの改定を急ぐよう期待したい。大陸棚の開発など大規模インフラ・プロジェクトの実施に当たっては官民協力を推進する新方式を盛り込み、また北極海航路の競争力強化のための方策を盛り込む必要がある。国際協力の可能性も包括的に活用すべきである。

[DW編集局]