[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
財務省
元記事公開日:
2017/04/12
抄訳記事公開日:
2017/06/14

フィンテック(FinTech)が生活様式やビジネス方式に変革をもたらす

FinTech will transform the way we live and do business', says the Chancellor

本文:

財務省の2017年4月12日付標記発表では、ロンドンで開催された国際フィンテック会議におけるフィリップ・ハモンド(Philip Hammond)財務大臣の開会演説の内容を報じているところ、同大臣の発言概要を以下に記す。

ここロンドンでは金融イノベーションとベンチャー・キャピタルとが結びつき、世界最大の国際金融サービス市場となっている。それがこの都市をフィンテック革命の最前線に押し出している。フィンテックは我々の生活様式やビジネス方式を変革する。友人間のキャッシュレス取引であったり、外国にいる家族への送金であったり、最適な貯蓄運用を自動的に行うアプリであったりと、フィンテクは消費者により良いサービス、より広い選択肢、さらなる低コストをもたらす。企業にとっては新しい安価な信用取引の利用を意味し、電子情報利用により可能になる仲介機能の排除で貯蓄者と企業が直接つながることになる。これは、中小企業へのオンライン貸し付け時に与信承認を与える技術を用いるなど革新的な流通技術を備えたP2P融資、クラウドファンディングなどを通して実現される。また企業のコンプライアンス・プロセスを自動化したアプリ(RegTech)は、劇的にコストを削減できる可能性がある。このような市場は驚異的な勢いで成長している。

2017年5月にはバークレイズ銀行が欧州最大のフィンテック促進機構を開設し、新興イノベーション企業に500の作業空間を提供する。またHSBCとトレードシフトはその「支払い調達」新製品が7月に稼働開始するとしている。これらは企業がそのサプライチェーンの全体および運転資本要件を1か所でどのデバイスからでも管理するのに役立つ。

英国は今やグローバルなフィンテック・ハブである。各大陸からやってきた450の投資家が英国のフィンテック・トップ企業100社と共同して、フィンテック革命の次なるステップを実行に移すべく、起業家がその創造力を発揮する方法を実証している。

英国が人材、起業家、市場を擁しているのはもちろんであるが、それを支援する規制や税環境も備えている。金融行動監視機構(FCA)は、“regulatory sandbox”を通じて、企業が安全な環境でその製品の対消費者試験を実施する方法を国際的に主導している。イングランド銀行のフィンテック促進機構は、中央の革新的なバンキング・ソリューションに基づいて企業が業務を実施できる機会を提供している。

政府もそれなりの役割を担っており、企業の規模拡大に向けた投資を支援するための新たな投資家救済策を昨年導入した。英国ビジネス銀行に4億ポンドの新規資本を投入して、英国の技術企業に10億ポンドの投資をさせる。また王立スコットランド銀行に対する提案を通じて、英国の企業バンキング市場における競争促進および今後のフィンテックに対するさらなる投資刺激策として、約7億5,000万ポンド相当の一連のイニシアチブに対するファンディングを予定している。

政府はさらに新しい産業戦略に基づいた検討を行っている。英国経済を過去10年以上にわたって悩ませている生産効率の低さを克服すべく投資を行う必要があり、そのため昨年秋には230億ポンドの生産性投資国家基金(National Productivity and Investment Fund)を発表した。職業に直結した技術者養成制度が必要であり、春季予算では16歳~19歳の年齢層向けの「T-レベル」に対する新規ファンディングを発表した。また経済に変革をもたらす可能性のある技術の変革を取り込む必要があり、産業戦略チャレンジ基金も発表した。

英国のフィンテック企業が最も期待しているのはアジアでの展開である。政府はすでにインド、中国、韓国、シンガポールなどの諸国とフィンテックに関する2国間協力で合意している。EU離脱後を見据えて、英国は急速に成長しているアジアの経済大国との取引関係を構築する必要がある。

[DW編集局]