[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
米国科学振興協会(AAAS)
元記事公開日:
2017/04/12
抄訳記事公開日:
2017/06/15

米国とEUの研究開発投資は停滞し、アジアの伸びも減速

Data Update: U.S. and E.U. R&D Budgets Remain Flat, Asian Investment Decelerates

本文:

2017年4月12日付の米国科学振興協会(AAAS)による標記報道発表の概要は、以下のとおりである。

経済協力開発機構(OECD)が発表した最新の科学技術指標データ(Main Science and Technology Indicators)は、米国と欧州における研究開発投資の停滞とアジア諸国における研究開発投資増加ペースの減速を示している。

【研究開発投資全体について】

OECD全体の研究開発投資の対GDP比(「研究開発強度」(R&D intensity)とも言う)は、2014年から2015年にかけて基本的に不変であった。
・米国の研究開発強度は、2014年の2.76%から2015年の2.79%へと極めてわずかな増加しか示さなかった。
・同時期の欧州連合(EU)の研究開発強度は横ばいであった。
・EUの中では、フランスとドイツがそれぞれ2012年と同レベルである2.23%および2.87%の研究開発強度を維持した。
・フィンランドの研究開発強度は、引き続き減少傾向にある。これは政府の緊縮政策と産業再編の結果である。

他方、アジア諸国の研究開発投資の伸びは減速しつつある。
・韓国の研究開発強度は、最近10年間、毎年伸び続け、2014年には4.29%に達したが、2015年には4.23%となり、久しぶりの対前年比減となった。
・日本の研究開発強度は、最近は増えたり減ったりのパターンを繰り返していたが、2015年は減少した。
・中国の研究開発投資は引き続き増加傾向を維持し、2013年には研究開発強度がEUを上回ったが、研究開発投資増加のペースは減速しつつある。

中国の研究開発投資増加ペースの減速が予想されているにもかかわらず、世界の研究開発投資における中国のシェアは今後も拡大し続けるだろう。中国の研究開発投資は、2014年にはEU全体の研究開発投資を上回った。OECDのアナリストは、中国の研究開発投資は2019年頃までに米国を上回るようになる可能性があると予測している。

【民間部門による研究開発投資の伸びについて】

最近の研究開発投資の増加は民間部門によってもたらされている。OECD全体の民間部門の研究開発投資は、インフレ調整済みドル換算で2005年の5,881億ドルから2015年の7,853億ドルへと伸びており、この10年間で33.5%という大幅増加となった。

OECD全体の研究開発投資に占める民間部門の負担割合は2010年の58.5%から2015年の61.3%へと増加する一方で、政府の負担割合は2010年の31.2%から2014年の27.4%へと減少した。OECD全体の政府負担研究開発投資の対GDP比も、最近のピークである2009年の0.73%から2014年には0.66%へと減少した。

進行中の産業界による研究開発投資の拡大およびそれと並行する政府研究開発投資の減少は、特に米国において顕著である。米国の研究開発投資における民間部門の負担割合は2015年には64.1%となり、2010年から7.2ポイントの大幅増加に対して、政府の負担割合は2010年の32.6%から2015年の24%へと低下した。

【特許出願件数の動向について】

特許出願件数は、国家レベルのイノベーション経済を比較するためのもう一つの指標となる。

日本と韓国は、この15年の間に顕著な特許出願件数の統計を積み上げてきた。さらに中国は一国だけで特許協力条約(PCT)出願件数の17倍増を実現し、多くのOECD加盟国を追い抜いた。中国政府による奨励策は特許出願を増やすことに成功した。他方、知識の国際化を表す指標と言われる三極パテントファミリー(triadic patent families)件数における中国のシェアは、米国、EU、日本のレベルを大きく下回っている。

米国の特許出願件数は、近年、2011年における新米国特許法の成立とともに最高潮に達した特許制度改革への取組みの中で上昇傾向にあった。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]