[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
元記事公開日:
2017/04/19
抄訳記事公開日:
2017/06/20

火山爆発に周到に備えるための科学界にとっての主要課題

Report Identifies Grand Challenges for Scientific Community to Better Prepare for Volcanic Eruptions

本文:

2017年4月19日付の全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)による標記発表の概要は以下のとおりである。

火山に関する広範な知識があるにもかかわらず、火山爆発の時期、期間、タイプ、規模、影響を予測する能力は限定されている。NASEMによる最近の報告書では、人の生命を守る爆発予測・警報の向上を図るべく、火山爆発の効果的な監視に資する研究優先課題および火山学界が直面している3つの主要課題を特定している。

火山監視は爆発の予測や災害リスクの軽減に不可欠であるが、適切に観測されている火山は稀で、多くは全く監視されていない。例えば米国内の潜在的活火山、169火山のうち、地震計(地下マグマの動きの兆候である小規模地震を検知する機器)を備えているのは半数未満である。またガスの継続的測定をしているのは3件のみであるが、これはマグマに溶け込んだガスの組成と量が爆発の引き金になるという理由から必要不可欠である。火山プロセスの実験的・数学的モデルの進歩と合わせて、監視の強化によって爆発の把握と予測の向上が可能になる、と報告書は述べている。

調査を実施して本報告書を作成した委員会は、地盤の変動やガスの排出の衛星観測、ドローンによる観測、高度の地震監視、爆発時のリアルタイム高速データ取得などの必要性を強調している。新たな方式の解析機能によるマグマの履歴解読、およびマグマ性の火山活動の概念的・実験的モデルにより、マグマの生成と爆発のプロセスについて新たな知見を得ることができる。

委員会は火山の下のマグマの移動・蓄積プロセスなどの領域における主要ないくつかの疑問と研究優先課題を概観している。爆発の開始・成長・終結の過程、火山の爆発過程、爆発の予測、火山爆発に対する地勢、海洋、大気の反応、地球表面の変化に対する火山の反応などである。

上記研究優先課題に基づいて委員会は、火山の科学・監視の向上に必要な3つの包括的主要課題を次のように特定している。
・モデルと観測を一体化することで、爆発の規模、期間、被害を予測する
・火山のライフサイクルを定量化することで、現在の偏った理解を克服する
・火山科学の統合的なコミュニティを構築する

[DW編集局+JSTワシントン事務所]