[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
元記事公開日:
2017/05/17
抄訳記事公開日:
2017/07/20

米国の熟練技術労働力は今後数十年を勝ち抜くには力不足:今こそ施策が必要

United States’ Skilled Technical Workforce Is Inadequate to Compete in Coming Decades; Actions Needed to Improve Education, Training, and Lifelong Learning of Workers

本文:

5月17日付全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)の標記記事の概要は次のとおりである。

政策立案者、雇用主、教育機関はこぞって米国の熟練技術労働力強化に努めるべきである。学生が技術的スキルを身に着けるべく、教育・訓練プログラムを全うできるように支援すべきであり、すでに仕事に従事している人には生涯を通じてスキルを向上させるような支援をすべきである。現状のままでは、米国は21世紀を勝ち抜くスキルを持った人材を育て、維持できないであろう。

熟練技術職というのは技術的に高い知識レベルを必要とすることで、学士号を要するわけではない。熟練技術者は医療、建設、製造といった幅広い職種で見られる。例えば、医学ラボのテクニシャン、機器設置・修理のテクニシャン、コンピュータ・サポート・テクニシャンなどがある。「中間スキル」という言葉が使われることもあるが、テクニシャンの価値の高さ、ダイナミズムを考えると、このような言葉はふさわしくない。

国レベルで熟練技術職の労働市場について詳細に調べたエビデンスは殆どないが、現在、ある種の職業、産業、地域において労働者の需要と供給のバランスが崩れているのは確かである。特にこの傾向が顕著にみられるのは医療のほか、科学・技術・工学・数学(STEM)スキルの熟練が益々必要とされる製造業である。

連邦政府および州政府の政策立案者は戦略を講じ、学生が熟練技術の訓練を全うできるようにすべきである。学生はすでに上がり続けている学費に上乗せしてこのような訓練を受ける財政的余裕はない。キャリア・カウンセリングを行ったり、職業情報を提供したり、学業成績に応じた財政支援をするといったことが考えられる。コミュニティ・カレッジなどの教育機関も柔軟で統合的なプログラムをつくるインセンティブが必要である。

教育省と労働省はプログラムの修了に報いるためにステークホールダーに対してインセンティブを与えるべきである。例えば、地方の雇用主が必要としているようなプログラムへの参加者や修了者の割合を増加させる基準と結び付けた資金援助方式を作るべきであり、教育者に熟練技術教育を取り入れるように勧告すべきである。また、コミュニティ・カレッジでこのようなプログラムを終了後、雇用される学生の模範例を収集し広く知らしめるべきである。

また、学生以外にも生涯教育の機会を作るべきである。例えば、教育省は学位をとる目的のみの学生に限られている財政支援を、生涯教育のクラスをとっている人々にも広げるべきである。

さらに、連邦政府および州政府は熟練技術者がどこにでも職を求めて移動できるように規制を緩和させるべきである。また、熟練技術者に対する労働市場の要求事項の変化について、情報収集して広く知らしめ、労働市場の不均衡を減らし、労働力の進歩が科学技術の進歩と歩調をあわせるようにすべきである。

議会は教育省と労働省に対して上記の改革の進捗状況について年次報告書の作成を要求すべきである。また、地方熟練技術者の教育・訓練に対する投資効果を調べるための支援をすべきである。

国防省はこのような熟練技術者を米国で最も多く抱えている組織の一つであるが、軍関係者に対する訓練とサービスの提供方法を改善することにより、軍関係者の軍から民間への移行を円滑にすることができる。

まとめとして、熟練技術労働力の価値と需要に関する認識を高めるため、産業、貿易、大学、市民協会、労働組合など関わるすべてのステークホールダーが米国労働省や教育省と一体となって、国レベルの官民キャンペーンを行うことを提案する。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]