[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
国防高等研究計画局(DARPA)
元記事公開日:
2017/06/02
抄訳記事公開日:
2017/07/25

電子磁気モーメントの特異的な配置がデジタル技術に変革をもたらす可能性

New ways of representing information could transform digital technology

本文:

2017年6月2日付の国防高等研究計画局(DARPA)による標記発表によれば、電子磁気モーメントの特異的な配置がコンピュータのメモリやロジックの本質的限界を克服できる可能性があるという。発表の概要は以下のとおりである。

コンピュータやその他のデジタル・デバイスを使用する人の多くは、モニターに表示される文字や画像のすべてが究極的には1と0のシークエンスで成っていることを知っている。しかしそのような1と0の背後にあるもの、つまり磁気モーメントの微小配列(正負両極をもった微小棒磁石を想像すると分かりやすい)を認識している人はほとんどいないようだ。鉄のような強磁性材料でこのようなモーメントが並列に並ぶと、1と0の磁気ビットのパターンやストリームを形成する。

これら磁気ビットは、熱に起因する摂動に対して、数の強さの形で安定である。何らかの理由で方向が逆転したモーメントは、ビット中の残りの整列したモーメントとの磁気的相互作用により元に戻される。製造技術の進歩やデータの読み書きに関する技術革新によりこのような磁気領域の圧縮を図ることで、この数十年間技術者らはコンピュータの能力向上を可能にしてきた。

ところが近年、上記アプローチは無制限に進歩することができないことが明らかになってきた。磁気ビットのサイズが小さくなりすぎると、モーメントの整列状態がぐらつき始めることが判明したのである。つまりモーメントの整列状態を保っている相互作用のエネルギーより周りの熱エネルギーのほうが大きくなって、ストレージやロジックに必要な重要なデジタルビット全体の安定性や信頼性を低下させるのである。多数の高性能電子デバイスで、磁気ビットサイズに関するこの熱力学的要件(超常磁性の限界)に到達しつある。つまり同一の量的空間でこれ以上のメモリを確保することは不可能である。

このほど発表されたDARPAの「エレクトロニクスにおけるトポロジカル励起」プログラムでは、従来の並行配列よりずっと安定性のある新規配置により上記モーメントを配列するための新方式の研究を目的とする。成功すれば、そのような新規配置によりデータのビットを現在よりも劇的に小さくすることが可能となり、チップ上で達成できるストレージ量を100倍に増やせる可能性がある。また全く新しいコンピュータ・ロジックの概念設計も可能で、また念願の量子コンピュータの基盤であるトポロジー的に保護された量子ビットでも設計可能になる。

トポロジカル励起と呼ばれる独特の配置パターンは非常に安定性があり、極小サイズに圧縮されてもその配置を維持する。トポロジカル励起のもう1つの特性は、少量の電流で高速移動が可能で、高速のリード・ライト操作も可能になる。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]