[本文]

国・地域名:
中国
元記事の言語:
中国語
公開機関:
中国科学報
元記事公開日:
2017/07/24
抄訳記事公開日:
2017/09/07

世界初のゲノム編集技術によってクーロン犬が誕生-中国は韓国に次いで犬クローン技術を独自に確立

世界首例基因编辑克隆犬的前世今生

本文:

2017年7月24日付の「中国科学報」ネット版は、「世界初のゲノム編集技術によってクーロン犬の誕生過程」と報じた。本記事ではその概要をまとめる。

1996年、世界で始めてクーロン技術によってクーロン羊のドリーが英国で生まれ、体細胞を利用することで両性が関わらず生体が繁殖可能なクーロン技術を実現し、その後、クーロン豚、クーロン牛が次々と誕生した。

犬については、科学界からも世界で最も難しいクーロンが可能な動物の一つであると考えられていたが、2005年、体細胞により世界で始めて「スナッピー」(Snuppy)と名づけたクーロン犬が韓国で誕生した。その後、韓国が犬のクーロン分野での技術を独占し続けている。

中国科学院広州生物医薬・健康研究院の頼良学研究員が北京希諾谷生物科学技術有限公司の研究チーム及び広州生物実験室の研究チームを率いてCas9ゲノム編集技術により、初めてゲノム編集モデル犬「リンゴ(苹果)」と「ヒョウタン(葫芦)」を生み出した。その後、複数の実験を経て、2017年5月に研究チームは「リンゴ(苹果)」の皮膚細胞をクーロン犬のドナー細胞(donor cell)として、クーロン技術を最適化させ、技術的困難を突破し、「リンゴ(苹果)」のクーロン犬である「竜竜」の生育に世界で初めて成功した。これは中国が韓国に次ぐ二番目に犬体細胞クーロン技術を独自に確立した国家になったことを示している。

犬のクーロン技術は世界的にも難題で、以下の多くの困難に直面する:
1.クーロン技術に対して多数の成熟した卵母細胞が必要である。犬卵母細胞の体外成熟の育成効率が低いため体内から成熟した卵母細胞を獲得しなければならない。
2.排卵時期の確定は難しく、漿液によりプロゲステロン(progesterone)を測定すると個体差が大きく、統一した排卵時期の判定標準を確定するのは難しい。発情の排卵周期を精確に確定するには高品質で成熟した卵母細胞を得るキーポイントとなった。
3.犬の卵母細胞内は脂質に富んで、粘性が高く、顕微鏡の操作が難しく、電気的体細胞融合の効率が低い。
4.生殖生理段階における犬胚胎移植においての受容体(receptor)とドナー(donor)の間の一致性を持つことが難しく、妊娠率が低く、クーロン技術自身の低効率等の問題があるため、大量のヒト・モノ・カネを投入する必要がある。

2013年、第三世代の新たなゲノム編集技術(CRISPR/Cas9)が開発され、ゲノム編集の構築が簡単で、遺伝子ターゲティング(gene targeting※)を高効率に編集できるという特徴により、世界から注目された。2013年から、頼良学研究員が率いる研究チームはゲノム編集の研究(最初の考え方は体細胞を遺伝子ノックアウト技術によりクーロン犬を誕生させることである)に着手し、ゲノム編集技術(CRISPR/Cas9)による犬のゲノム編集を実施した。2014年6月、世界初の遺伝子ノックアウト(MSTN)技術を用いて「ヘラクレス(Hercules)」と「てんぐ(TENGU)」と呼ばれるクーロン犬が誕生され、4か月後、運動能力を持っていることが確認できた。2016年10月、頼良学氏の研究チームは初期の基礎研究に基づき、犬APOE遺伝子ノックアウト技術の研究に取り組み、12月29日、世界初の遺伝子組換え(ゲノム)アテローム性動脈硬化疾患のモデル犬「苹果」を生み出し、その20日後には、別のAPOE遺伝子ノックアウト技術を用いたクーロン犬である「ヒョウタン(葫芦)」が生まれた。

※遺伝子ターゲティング(gene targeting):内在性の遺伝子の改変に相同組換えを用いる遺伝子工学的手法である。 この方法は遺伝子の削除、エキソンの除去、遺伝子の導入、点変異の導入等を用いることができる。

[JST北京事務所]