[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
元記事公開日:
2017/08/10
抄訳記事公開日:
2017/09/26

大学の生物医学研究コミュニティは災害に備えてレジリアンスを構築すべき

Academic Biomedical Research Community Should Take Action to Build Resilience to Disasters

本文:

8月10日付、全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)の標記記事の概要は次のとおりである。

NASEMの最新の報告書は、「大学の生物医学研究コミュニティは災害の影響を最小限に抑え、回復することができるよう改善すべきである。なぜなら、ハリケーンからサイバーアタックに至るまで、最近の災害の結果をみると、米国連邦政府および他のスポンサーからの投資、年間270億ドルは一様に保証されているものではないからである」と述べている。

報告書によると、大学研究機関、研究者、研究支援機関は学術生物医学研究のレジリアンスを強化するには10のステップがある。例えば、大学研究機関は学生、スタッフ、教員に対し、災害レジリアンス教育を義務付けるべきである。そして、国立衛生研究所(NIH)はステークホルダーを結集して生物医学研究企業の災害レジリアンスを強化するために研究支援機関ができる取り組みについて議論すべきである。以下は報告書の概要である。

研究ラボや機関に被害を与える災害は、人や実験動物の安全や生活、およびキャリア軌道や科学の進展に多大なる影響を及ぼす。科学の向上、将来の発見を目指すにはレジリアンスへのコミットメントが必要であり、危機管理と学術研究の間での比類なきパートナーシップが必要となる。

報告書はハリケーン・カトリーナやサンディなどの過去の災害が大学機関、教師、および研究プロジェクトに及ぼした影響について述べている。対策を講じていなかったために、最大の被害となったが、これは機関内の欠点や、機関のいたるところにみられる慣行によるものであった。例えば、発電機やその他の設備が低層階に設置されていたり、実験動物が地下で飼われていたり、また緊急対策によると、研究所で働く人が現場に到達不可能であることを想定していなかったり、実行しがたいものであったりしたことなどが挙げられる。

レジリアンス計画は機関全体で立案することであり、上層部の同意、優先順位をつける権限、財政的支援を必要とする。この対策は地方、州、連邦政府のすべてのレベルで統一されるべきである。このような取り組みにより、人間、実験動物、資産、環境が守られ、研究の高潔さと継続性が保たれる。

各研究機関は災害時レジリアンスの取り組みを監視できるような責任あるシニア人材を「レジリアンス管理者」として選んでおくべきである。この管理者は対策委員会を主導することにより、研究企業の特徴を理解し、レジリアンスのゴールや目的を決め、計画を策定し、実行することになる。

研究主宰者(PI)は研究機関と共に、重要な研究データ、備品、試薬を守るべきであり、研究機関は研究所外に保管場所を確保し、重要なサンプルやデータは複製すべきである。このような資料やデータを守るのはPIと研究機関の両方の責任である。さらに、研究機関は研究を支える施設や重要なインフラに、実績に基づいた基準を設けるべきである。例えば、新設の研究棟には災害対策が施されていることが必須であるというような条件をつけることが考えられる。

さらに、各大学研究機関は災害レジリアンス教育・訓練プログラムを必須として実行し、このようなプログラムを、生徒、職員、教員向けの広い意味での安全性、倫理性、法順守訓練プログラムに取り入れるべきである。新入生や新しく機関に入った人材はこのようなプログラムを通して、広義のインシデント・コマンド・システムの中で、研究機関の主たるレスポンダーとなり、機関外のファースト・レスポンダーとの連携能力を向上させる。

各大学研究機関は、研究企業を継続、発展させるために、限られた予算をどのように災害前、災害後の環境に投資すればよいかを考えなければならない。そして、研究機関としての財政的投資戦略を策定しなければならない。例えば、災害レジリアンスを向上させるために、新しい財源を見つけるとか、すでにある財源を組み直すことが考えられる。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]