[本文]

国・地域名:
オランダ
元記事の言語:
英語
公開機関:
オランダ科学研究機構(NWO)
元記事公開日:
2017/08/17
抄訳記事公開日:
2017/09/27

原子層により、スピントロニクスが実用化に向けて前進

Atomically thin layers bring spintronics closer to applications

本文:

オランダ科学研究機構(NWO)の2017年8月17日付のニュースで、標記の記事が掲載されている。以下にその概要をまとめる。
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スピノザ賞を受賞した物理学教授Bart van Weesが率いるフローニンゲン大学の研究者らはこのたび、電子スピンをこれまでにない高効率で注入、検出できるグラフェン・ベースの装置を開発した。この結果、スピンシグナルが100倍に増大し、新型のスピントランジスタやスピンベースのロジックといった実用化で用いるのに十分な数となる。この研究は欧州連合による10億ユーロ規模の研究イニシアティブ「グラフェン・フラッグシップ(Graphene Flagship)」の一部で、成果は2017年8月15日の『Nature Communications』で公開された。

Van Wees教授の研究室では、様々な物質のスピン挙動をより的確に理解することを目指している。教授の研究室はまた、スピンシグナルを室温下で記録的な距離にわたり転送することに成功している。最近の実験では、電子スピンの注入と検出に重点が置かれていた。

グラフェンのスピンに関する研究は、欧州連合の10年間におよぶフラッグシッププロジェクトの一部。このプロジェクトは予算10億ユーロで2013年にスタートした。Van Wees教授はスピントロニクスのワークパッケージ主導者であるが、このパッケージの目標はこれまでのところ全て達成されており、少なくともあと2年間は継続される予定となっている。現段階では、産業部門のパートナーと協力し、研究室での成果を実用化することが重要な目標。

Van Wees教授は、「すでにグラフェンにおける電子スピン転送を増大させ、転送方向の操作に成功している。今後は、その物理的課程を理解し、これらの装置をより大きなシステムに統合していくための技術を開発していかなければならない。また、実現可能と考えられる新しい用途についても考察する必要がある。」と述べている。

[JSTパリ事務所]