[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
フランス科学アカデミー
元記事公開日:
2017/09/25
抄訳記事公開日:
2017/11/15

報告書:生物多様性分野の気候変動への適応メカニズムとその限界

Les mécanismes d’adaptation de la biodiversité aux changements climatiques et leurs limites

本文:

2017年9月25日付フランス科学アカデミーの標記報道発表の概要は以下のとおり。

人類社会はその起源以来、その物理的・生物的環境を多様な方法で活用したり改善したりして来た。最近の生物多様性の劣化は、人間活動の直接的影響を大きく受けた結果である。農業、森林破壊・都市化、陸地や海洋における種の乱獲、外来種の大量発生などによる住環境の破壊・変更・分断化などである。

100年単位ではあるが、最近の気候変動による生態系への影響には上記のような擾乱が関係している。観測された気候変動が最近の生物多様性劣化の主たる原因ではないとしても、何らかの関与をしていることは明らかである。

本報告書では生物多様性に対する気候変動の影響を扱っているが、特に気候変動への適応のメカニズムとその限界について述べている。

第1部は、生物、生物群、種のレベルから始めて地域社会、生態系のレベルに至るまで、気候変動への生物学的適応メカニズムについて述べている。

第2部では、気候変動が生物多様性に及ぼす影響を最小限に抑える目的で、生態系の管理および活用の業務において、上記生物学的メカニズムを考慮に入れる方法、また他方では社会の気候変動に対する脆弱性を低減するための生命の適応性を最大限に生かす方法について、概要を述べている。

結論:温度上昇は、各種動植物の最適生態系が極地地域や標高の高い地域に移動するという結果をもたらしている。したがって本報告書では種および生態系の適応能力を吟味している。それには生物多様性が人間社会に果たす役割と合わせて、気候変動の主要な現象のほかその構成要素全体の複合的な相互作用への対処が含まれる。

7項目の提言
・生物多様性の観測網を展開すること
・環境学者、歴史学者、考古学者、地質学者間の相互議論による長期的、短期的考察を行うこと
・多様な未来シナリオのモデルを作成すること
・「持続可能な発展」に即した教育を行うこと
・温暖化に起因する病気の発生拡大に対処するため、公衆衛生と病原生態学の接近を図ること
・農林政策を再検証すること
・生物多様性に有害なその他要因に関与すること

[DW編集局+JSTパリ事務所]