[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
米国科学振興協会(AAAS)
元記事公開日:
2018/03/22
抄訳記事公開日:
2018/05/10

2018年度米国科学技術予算は約10年ぶりの大幅な増加

Omnibus Would Provide Largest Research Increase in Nearly a Decade

本文:

3月22日(3月23日に更新)付け、米国科学振興協会(AAAS)による標記記事の概要は次のとおりである。

2018年度は半分過ぎてしまったが、2018年度連邦政府科学技術予算がようやく成立した(この記事が書かれた3月22日時点で大統領の署名が未だであったが、23日に署名され、成立した)。

2018年度連邦政府科学技術予算は1,768億ドル、前年比12.8%増、額で201億ドルの増加である。基礎・応用研究は前年比10.7%(81億ドル)の増加で、総額832億ドルとなる。GDP比率は0.42%で予算執行差し止め手続きが始まって以来、最高の増加である。

過去には、2009年に米国再生・再投資法が施行され、総額180億ドルの増加となり、その半分は国立衛生研究所(NIH)に充てられ、NIHの予算のみで見ると25%の増加であった。また、2001年には国立衛生研究所(NIH) の予算倍増計画の下、基礎・応用研究費総額が14.1%伸びた。故に、今回の2018年度の科学技術予算は、過去と比較して見ると、17年間で最も寛大なものとなった。

2018年度科学技術予算で注目すべきは、国立衛生研究所(NIH)とエネルギー省(DOE)の増額である。その他、軒並増額となっているが、機関別にみると次のようである。

エネルギー省(DOE)
DOE科学局のプログラムはすべて少なくとも10%増。特にコンピューティング・核融合エネルギー研究を増加。国際ITERプロジェクトには2倍以上の1億2,200万ドルの予算。エネルギー高等研究計画局(ARPA-E)は廃止を逃れた。エネルギー・イノベーション・ハブやエネルギー・フロンティア研究センター、産官製造イノベーション研究機関は現状維持。

国立衛生研究所(NIH)
すべての部署が少なくとも約5%の増加。高齢化・アルツハイマー病研究に4億1,400万ドルを追加。薬物研究に5億ドル追加。BRAINイニシアチブ、がん・ムーンショット、精密医療イニシアチブは21世紀治療法案に沿った額となる。

国立科学財団(NSF)
研究関連予算は3億100万ドル(5%)増となる。この基礎科学への投資は、中国並びに他の競合諸外国が研究費で米国を抜きつつあることに対する議会の懸念を反映。また、3隻の海洋調査船の建造にも予算が付く。教育局も2.5%の増加となる。

米国航空宇宙局(NASA)
前年比11億ドルの伸びとなる。現政権の地球科学予算削減案は議会により却下され、前年度並みとなる。惑星研究は3億8,200万ドルとなる(20.7%増)。さらに、5億9,500万ドルを木星探査のためのエウロパ・ミッションに充てる。教育局は大統領による削減を免れる。

国立標準技術研究所(NIST)
研究所のプログラムは5%増(現政権は削除を提案)。また現政権により廃止が提案されていたHollings Manufacturing Extension Partnership (MEP)は継続。研究施設建設費は3倍に増額。

海洋大気局(NOAA)
海洋大気研究局は下院と現政権による削減案に対し、前年度並みの予算となる。また、昨年の予算要求では相当の削減対象とされた極域ミッションに4億1,900万ドル充当。

米国地質調査所(USGS)
8つの気候科学センターを維持、現政権はこれを4つに削減するよう提案していた。地震・火山早期警戒システム研究も維持、これも現政権は削減を要求していた。

環境保護庁(EPA)
大統領の25億ドル削減案を免れ、前年度並みの予算となる。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]