[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
国家科学技術会議(NSTC)
元記事公開日:
2018/03/27
抄訳記事公開日:
2018/05/17

北極圏研究政策省庁間委員会による隔年報告(2016~2017年)

INTERAGENCY ARCTIC RESEARCH POLICY COMMITTEE BIENNIAL REPORT 2016-2017

本文:

3月27日付で国家科学技術会議(NSTC)は標記報告書を公表した。その中から北極圏研究政策省庁間委員会(IARPC)による2016~2017年の達成事項の概要を以下に要約する。

・関係機関・協力機関との共同の取り組み
北極圏での研究実施に関するIARPC原則の改訂作業にとって、複数の関係機関・協力機関との共同作業は不可欠である。IARPC原則が1990年に発表されて以降、北極圏地域や北極圏研究に関してかなりの変化があり、そのためIARPC原則の改訂作業が進行中である。このような変化としては、北極圏研究における先住民やその知識の重要な役割について認識が高まったことなどがある。

・保健衛生・福祉
北極圏の急速に変化する環境は、食料、水、およびエネルギーの安全保障に対する新たなリスクとなっており、北極圏住民の健康状態に影響を及ぼすことを意味している。健康状態共同作業チームの主要な成果としては、住民、野生生物、環境、気候の間の繋がりを認識したヒトの健康への総合的な対処方法の支援などがある。

・海洋生態系研究
6か国(カナダ、中国、日本、韓国、ロシア、米国)の共同取り組みによる包括的調査「分散型生物学的観測」(Distributed Biological Observatory:DBO)が2016年から2017年にかけて実行された。2010年に米国が開始し、米国海洋大気局(NOAA)や国立科学財団(NSF)からの支援に加え、複数のIARPC関連省庁や海外の対応機関の支援を受けて、DBOは環境変化に対する生物物理学的反応の特定および一貫したモニタリングのための変化検出のためのアレイとなっている。

2017年8~9月にはNOAAは海洋生態系研究クルージングを主導したが、これにはDBOによる調査のほか、ベーリング海北部およびチュクチ海における米国沿岸警備隊の小型船に乗船しての北部チュクチ地方の総合的調査が含まれていた。この2017年の小型船によるクルージングは、NOAAが民間セクターとの革新的な協力作業として海のドローン”Saildrone”を操作する2度目の機会(1回目は2016年夏ベーリング海において)であった。自律航行するSaildroneは全長7メートルのプラットフォームで、アウトリガーと6メートルのマストが支える固定セールを備えており、大気および海洋研究用の複数のセンサーを搭載できる。この無人水上艇Saildroneは76日間にわたる航海の間、北極圏海域酸性化の継続調査の一環で大気および海洋中の二酸化炭素濃度を数千回測定した。

・北極圏・寒帯の生態系・社会生態系に関する国際研究の統括
陸上生態系共同研究チームを通して、米国航空宇宙局(NASA)の北極圏・寒帯脆弱性実験(ABoVE)科学チームは米国、カナダ、欧州の政府および非政府組織の資金支援を受けた研究を統括している。ABoVEは北極圏・寒帯地域における環境変化や社会生態系に対するその影響を調べる大規模なリモートセンシングやフィールド調査である。

・観測・モデリング研究者らの連携強化
コンピュータ・モデルに有効な制約条件を提供する複数の大規模観測データセットが公表されるなど、観測研究・モデルリング研究の各コミュニティ間の連携が強化され、科学の進歩に大きな機会を与えつつある。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]