[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
元記事公開日:
2018/06/12
抄訳記事公開日:
2018/08/20

セクシュアルハラスメント防止のため、学術機関は法遵守を超えて、防止と文化の改革に取り組むべきである

To Prevent Sexual Harassment, Academic Institutions Should Go Beyond Legal Compliance to Promote a Change in Culture; Current Approaches Have Not Led to Decline in Harassment

本文:

6月12日付、全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)の標記記事の概要は次のとおりである。

このたびNASEMが発行した報告書は科学・工学・医学の学術界で女性に対するセクシュアルハラスメントを調査したもので、セクシュアルハラスメントは研究の公正性に深刻な打撃を与え、学術界における才能の多大な損失を引き起こす、と結論づけている。同報告書は研究機関に対し、セクシュアルハラスメントは研究不正と同様の影響をもたらすものと見なすよう、強く要請している。

報告書は、大学、政府機関は基本的な法遵守を超えて、包括的な、エビデンスに基づいた方針を作り、実行すべきであるとしている。また、セクシュアルハラスメントは一般的に無礼で相手を尊重しないような環境で起こりがちであり、多様性、包摂性、尊敬に重きを置く組織的なシステムでは起こりにくいと述べている。

報告書はさらに、連邦政府議会、州議会に対し、和解契約書の機密保持の禁止や、ハラスメントを起こした機関ではなく本人に直接訴訟が可能とする一連の措置を検討するよう要請している。また、裁判官、学術機関、政府機関に対して、機関の遵法性や個々の訴訟案件を評価する際に、セクシュアルハラスメントの対象者や加害者の行動について、科学的根拠に基づいて判断するよう推奨するとともに、学会はそれぞれが代表する科学、医学、工学のコミュニティで、セクシュアルハラスメントに対して影響力を行使し、「礼儀と尊敬」に基づく文化の育成を支援すべきであるとしている。

報告書によると、科学・工学・医学分野ではセクシュアルハラスメントは珍しいことではない。テキサス大学の調査では、同大学の女子学生は科学専攻では約20%、工学専攻では25%以上、医学専攻では40%以上が教員またはスタッフからのセクシュアルハラスメントを経験している。ペンシルベニア州立大学の同様の調査では、全校の学部女子学生の33%、大学院女子学生の43%、医学専攻の女子学生では50%という結果となっている。

また、大学の女性教員およびスタッフ(分野を問わず)の58%がセクシュアルハラスメントを受けたことがあるとの調査結果もある。他の研究では、非白人女性はセクシュアル、人種ハラスメントをより多く受けるという研究結果もある。

こうした問題の解決に向けて、大学には強力なリーダーシップ、さらなる透明性、説明責任が求められる。大学の学長、副学長、学部長、などがセクシュアルハラスメントの削減や防止を任期中の目標とすべきである、と報告書は推奨している。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]