[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
財務省
元記事公開日:
2018/10/29
抄訳記事公開日:
2018/12/19

財務大臣による2018年秋季予算編成方針演説

Budget 2018: Philip Hammond's speech

本文:

2018年10月29日付財務省の標記発表によると、フィリップ・ハモンド財務大臣は同日英国議会において標記演説を行った。同演説の内容と予算書(レッドブック)に盛られたポリシー・ペーパー等から科学技術・イノベーションに関わる部分を抜粋・要約して以下に記す。

(財務大臣演説から)
財務大臣は標記演説の中で「大学や研究機関から湧き出る新しい科学技術の発見の波を利用することで、英国は再び世界をリードすることができる。インフラ、研究、スキル、地域に投資して、変化に対応する将来を迎えるならば、生産性の課題は解決することができる」と述べているが、「生産性と技術イノベーション」については過去2回の予算編成方針演説で詳細に言及しているとの理由で、今回は施策の詳細を予算書(レッドブック)の記述に譲ると言明している。その上で、大臣は演説では例として次の事項を挙げている。

・新産業戦略を支援するための16億ポンドの新規投資により、核融合から量子コンピューティングまで様々な技術に取り組む。
・世界中から最も優秀な人材を引き寄せるためのフェローシップに1億5,000万ポンドを投じることで、引き続き英国の科学研究が世界をリードできるようにする。
・インフラへの投資は、国家生産性投資基金(NPIF)を再拡大することで、 2023~24年までに380億ポンド超を用意する。
・上記の結果、今後5年間で公的投資総額を30%増加させる。

(予算書:ポリシー・ペーパーから)
https://www.gov.uk/government/publications/budget-2018-documents/budget-2018#policy-decisions

英国がEU離脱の準備を進める中、政府は公共サービスに投資し、企業を支援し、全英の生活水準を向上させることによって、明るい未来を確保するためのさらなる措置を講じる。今回予算でこれをサポートするが、その方策には例えば次のような施策が含まれる。

・国家生産性投資基金(NPIF)を310億ポンドから370億ポンドに増やし、2020~25年の間に過去最大規模の288億ポンド相当の戦略的道路投資パッケージを提供する。
・英国のユーザーから得た価値を反映して、検索エンジン、ソーシャルメディア・プラットフォーム、オンライン・マーケットプレイスの収益に2%の税金を課すことで、既存の大手デジタル・サービス企業が公正な負担をすることを確実にする。

生産性向上策に関して、今回予算では、研究・イノベーションによってもたらされる経済のビジョンを示し、さらに16億ポンドの研究開発ファンディングを発表している。政府は産業戦略上の主要課題を支援し、人工知能(AI)、核融合、量子コンピューティングのような新興技術における世界的リーダーとしての英国の地位を確保するための追加ファンディングを提供する。

今回予算ではまた、企業や起業家を支援し、民間部門の投資を促進し、起業や企業の成長を望む人々を支援する施策を行う。さらに、政府は成長企業に対して数十億ポンド相当の年金基金投資を開放する。また、新しい経済における高賃金職の恩恵を活用するために必要なスキルを人々に提供するための手段を設けるべく、国家再教育制度の詳細を示し、実習制度における雇用者の役割を強化する。生産性向上策に関するその他主要施策は次のとおり。

a) インフラ整備
これまでで最大規模の戦略的道路投資パッケージを発表し、デジタル・インフラの全国展開のための追加措置を発表した。全体として、政府は2021年までに2015年に比べて年間90億ポンド多い額をインフラに投資する。

b) 新技術・イノベーション支援
政府の研究開発に対する長期的な取り組み、および2027年までに総研究開発投資をGDPの2.4%に引き上げるという産業戦略の大目標を踏まえて、今回予算では、最先端の科学技術に対する大幅な追加支援が含まれている。

・研究開発に対する長期支援
科学・イノベーションにおける英国の世界的リーダーシップを強化するために16億ポンドを割り当てる。

・産業戦略チャレンジ基金
研究開発への投資の一環として、政府は、将来技術を支援するべく産業戦略チャレンジ基金を11億ポンド増額する。

・量子技術
政府は、量子技術の開発と実用化を支援するために、さらに2億3,500万ポンドを投資する。これには、産業戦略チャレンジ基金から最大7,000万ポンド、新たに国家量子コンピューティングセンターを支援するための3,500万ポンドが含まれる。

・核融合
核融合分野における英国のリーダーシップを維持し、政府のクリーン成長主要課題(Clean Growth Grand Challenge)を支援するために、2019~20年に英国原子力機関が核融合技術の開発・実用化に関して画期的な研究を加速できるように、2,000万ポンドの追加支援を発表した。

・人工知能とデータ駆動型イノベーション
政府は、英国が新興デジタル技術の最前線での立ち位置を確保する施策を既に取っている。今回予算ではその次なる措置をとる。

・グローバルAIフェローシップ制度および将来の人材フェローシップ制度
世界トップクラスの研究人材を英国に引き寄せ、保持し、育成するために、政府は新たなTuring AIフェローシップ制度に最大5,000万ポンドを投資し、AIにおける世界最高クラスの研究者らを英国に取り込むことを目指す。また国際的なフェローシップ制度に1億ポンドを投資する。

・カタパルト
起業家や企業による最先端技術へのアクセス、およびその活用を支援するため、政府は(北東・南東イングランド、北アイルランドにセンターを持つ)デジタル・カタパルトおよびチェシャーの医薬発見カタパルト向けファンディングの拡大のために1億1,500万ポンドを認可する。

・政府の中核における科学・イノベーション
政府における最先端の科学・イノベーションの利用を促進するために、公衆衛生やサイバーセキュリティなどの分野で最も喫緊の課題に取り組む目的で考案された年5,000万ポンドの基金を新設する。この基金は、政府と産業界の共同プログラムに焦点を当て、2021〜22年に開始される。

・全国のイノベーション支援
政府は、”Strength in Places”(現地対応能力) 基金を通じて1億2,000万ポンドを追加投資する。このファンディングは、既存のプログラムを2021-22年まで延長するものである。

[DW編集局]