[本文]

国名:
ドイツ
公開機関:
フラウンホーファー協会 システム・イノベーション研究所(ISI)
元記事公開日:
2018/12/21
抄訳記事公開日:
2019/02/08
元記事の言語:
ドイツ語

イノベーション指標2018:ドイツはイノベーション業績において停滞

Innovationsindikator 2018: Deutschland stagniert bei Innovationsleistung

本文:

フラウンホーファー協会 システム・イノベーション研究所(ISI)が欧州経済研究センター(ZEW)と共同でドイツ連邦産業連盟(BDI)の委託でイノベーション指標2018を作成し、これに関して概略下記のような報道発表を行った。

イノベーション指標2018では、ドイツは2017年度と同様、イノベーションランキング世界第4位を占めたが、シンガポール、スイス、ベルギー等のトップグループとの差は拡大している。今回初めて調査されたオープン指標では、ドイツのイノベーション・システムは、世界の経済大国の中で最も開放が進んでいることを示している。

プロジェクトリーダーであるフリーチュ博士(Dr. Rainer Frietsch)によると、「イノベーション指標2018でドイツが上位にランクされたからといって、それが即イノベーション拠点として全ての点で優れているというわけではない。特に大学、研究機関、企業におけるイノベーションプロセスはもっと開放的に、より統合させていかねばならない」とし、「ドイツはイノベーション力の点で絶対的な世界トップの一員となる意欲を持たなければならない」と続けている。

同指標で考慮されたサブセクターにおいて、ドイツはそのどれにも国際的に上位を占めておらず、科学(10位)、教育(10位)、社会(12位)となっている。ただ国家(第8位)および経済(9位)では結果が若干順位を上げているが、ドイツの経済は対前年度比でランクを二つ下げている。

BDIのケンプフ会長(Dieter Kempf)は「ドイツはイノベーション競争において後退し続けており、これは憂慮すべきもので、この傾向はストップされねばならない」と述べ、「政治家は今やこれ以上時間を失ってはならず、将来のイノベーションに向けた道筋を定めなければならない。研究および開発に関する充分な税制優遇措置は効果的なプロジェクト助成と組み合わせることにより必要なインパクトを与えるものになる」としている。

既存のプロジェクトファンディングを補完する研究開発税制優遇措置の導入と並び、これまでの優れた研究の助成に関する27億ユーロの財源も大幅に増額されるべきである。加えてイノベーションの助成は、新しいビジネスモデルの開発および普及から全く新しい市場セグメントあるいは市場の確立に至るまで、より強力に重点を置くべきである。

イノベーション指標の枠組みの中で初めて今回オープン指標が調査され、ドイツはアメリカ、日本、中国を凌ぎ世界の経済大国の中で最高のスコアを獲得、総合21位となっている。中でもドイツ経済は相対的に良好な状態にあり、オープン度は17位となっている。イノベーション・システムにとってオープンであることは極めて重要である。イノベーションに不可欠である新たな協力やアイデアは、情報交換によって生まれるからである。イノベーションの成果とイノベーション・システムのオープン性は明らかに関連性があることが証明されている。

研究チームが非常に重要なものとして推奨しているのは、アカデミアと経済界の間の知識移転を一層有効に機能させることである。フラウンホーファーISIのヴァイセンベルガー・アイブル教授(Prof. Weissenberger-Eibl)はどのように機能するかについて次のように述べている:「知識移転は頭脳を通じての移転、すなわち産学の人材流動によってよって行うことができる。加えてイノベーション・システムの開放はテストベッドやリアルラボを通じて、新たなアプローチを検証し、市場での利用に備えることができる」。しかしこれに限らす、オープン・アクセス、オープン・データならびにシチズン・サイエンスの強化はドイツにおけるオープン・イノベーション文化の重要な礎石であり、必要な文化の転換や開放性の向上に寄与することが可能となる。

BDIのケンプフ会長によるイノベーション指標2018の序言:

イノベーションランキング総合4位。これは一見すると、前年度と同じ順位のように思われる、しかし決定的な違いが一つある。それはトップとの差が開いていることである。中国のイノベーション・パフォーマンスはEUと比べ約3倍の速度で上昇している。特に中小企業は遅れをとることがないように、再び集中的にイノベーションに参加しなければならない。大学、研究機関、企業におけるイノベーションプロセスはよりオープンにならなければならず、そして急成長する革新的なスタートアップがより増えなければならない。簡単に言えば、ドイツは競争よりもダイナミズムを必要としている。

イノベーション指標は、どのパラメータを強化しなければならないかを明示している。連邦政府は研究の税額控除措置を導入し、デジタルインフラを拡大しなければならない。デジタル化の成功への鍵はドイツの産業の強みとAIの持つ可能性との融合である。革新的なAI応用への大幅な投資増だけが、AIの産業へのインパクトを増加させる。加えてハイテク創業の助成を推進し、中小企業への技術移転を加速化させるものである。

重要なのは、開放的なイノベーションプロセスへの文化的転換を支援することである。いわゆる頭脳を通じた移転、専門的な人材が専門分野や企業の境界を越えて人的交流をすることである。このために、産学間の双方向での一時的な人的交流に関する既存の労働法、社会法における壁を下げねばならない。

新たな技術分野でその付加価値ポテンシャルを獲得するためには、より多くの自由空間が必要であり、パイオニアとして新しいものを検証し、市場導入のために準備するためのテストベッドやリアルラボが要る。連邦政府の飛躍的イノベーション庁が多くの企業を支援する予定である。

イノベーション指標を作成したISIおよびZEWの研究者はドイツ経済のイノベーション力の相対的な低下を最大のマイナスと考えている。ドイツは経済サブインディケータ2012ではトップ3拠点の一つになっていたが、今日では第9位である。ドイツを抜いた国の経済はドイツ経済よりもダイナミックに発展している。例えばベルギー、イスラエル、アイルランドが前を走っている。ドイツは、世界市場で新たなユーザーを見出せるような有効なイノベーションにより、再びトップを目指したい。

知識と実行計画がないというわけではない。政治家は今やこれ以上時間を失してはならず、将来のイノベーションへの道筋を定めなければならない。成長と繁栄、向上と参加のチャンスをもたらし、雇用を確保し創出するものである。

[DW編集局]