[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
米国科学振興協会(AAAS)
元記事公開日:
2019/01/10
抄訳記事公開日:
2019/03/19

AAASが商務省に新興技術の管理に関する意見を提出

AAAS Comments on Dept. of Commerce Controls for Certain Emerging Technologies

本文:

(訳注:本意見は、商務省産業安全保障局(BIS)が2018年11月に公示した、米国の安全保障のため輸出規制対象とする新興技術の特定方法に関する意見募集に対応するもの。)
https://www.federalregister.gov/documents/2018/11/19/2018-25221/review-of-controls-for-certain-emerging-technologies

1月10日付で米国科学振興協会(AAAS)が商務省に提出した標記意見の概要は以下のとおりである。

科学全般に関するコミュニティとして米国で最も古いものの一つとしてAAASは、科学者間の開かれたコミュニケーションと研究活動の自由が科学的知識の発展とその知識の全ての米国人の利益のための活用にとって不可欠であるという立場を長く保持してきた。同時に、科学と工学のフロンティアが発展するに伴い、国家安全保障と開かれた科学的コミュニケーションの間に内在する対立が顕在化しうると我々は認識している。AAASは、国家安全保障、経済的繁栄と科学協力の相互関係については、慎重さと相当の注意を持ってバランスをとる必要があると信じる。この理解を念頭において以下の意見を提出する。

基礎研究の除外

商務省産業・安全保障局(BIS)が検討中の規則案の事前公表に、基礎研究(fundamental research)を規制の対象外とすることと、輸出管理規制(EAR)セクション734.8に記載されている基礎研究の定義を維持することが述べられていることは喜ばしい。AAASは数十年に亘って、基礎研究の成果の普及、交換および提供に対する政府の制限に反対してきた。また、我々は、国家安全保障指令189(NSDD189)に述べられている、科学と工学における基礎研究と応用研究を含む基礎研究を国家安全保障の名のもとに過度に制限しないという原則をBISが守ることを勧める。

新興技術(Emerging Technologies)を定義し同定するための基準

何が基礎研究に該当し、どの時点である分野が国家安全保障上の懸念がある新興技術になるのか明確ではない状況も考えられる。従って、新興技術の定義と同定基準がこの手続きの重要要素となる。AAASは、政府関係協議会(COGR)、大学輸出規制担当官協会(AUECO)等から提案されている以下の指針に同意する。

新興技術とは、米国の国家安全保障上の利益に不可欠である、具体的な未成熟(発展途上)の中核技術であって、以下に該当するものをいう。

  • 特定の同定可能な従来型の兵器、情報収集アプリケーション、大量破壊兵器またはテロリスト・アプリケーションの開発、製造、使用、運用、組み込み、整備、修理または改修に必要とされるもの。
  • 米国に具体的で同定可能な、質的な軍事上あるいはインテリジェンス上の優位を与えるもの。
  • 外国で入手可能または開発中ではないもの。
  • 既存の多国間管理の対象ではないもの。

さらに、BISが国家安全保障上懸念がある新興技術の同定に関して商務省の技術助言委員会から支援を得ることを勧める。産学官の人材の科学的技術的専門能力の活用は、基礎研究の発展を妨げずに国家安全保障上の利益のバランスを取る観点からBISの新興技術を同定する能力を高める。

最後に、輸出規制の科学技術への適用について、研究発展の早すぎる段階で適用したり、広すぎる範囲に適用したりしないことが重要である。BISが新興技術かもしれないものと基盤技術(foundational technologies)に該当するものとの違いを認識するとともに、基盤技術を別の規制で扱おうとしていることは評価できる。しかし、科学的研究・発見のプロセスは、もはや、容易に捕捉し管理できる個別の段階からなる線形過程ではない。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]