[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
高等教育・研究省(MESR)
元記事公開日:
2014/04/23
抄訳記事公開日:
2014/05/30

フランスにおける高等教育・研究の現状

L'état de l'Enseignement supérieur et de la Recherche (n°7 - Mars 2014)

本文:

国民教育・高等教育・研究省は2014年4月23日標記資料集(第7版)を公表した。その中から研究に関する部分を抜粋・要約して以下に記す。

1) フランスにおける研究開発努力
1981年以降2倍になった国内研究開発支出は2011年には国内総生産の2.25%を占め、450億ユーロとなっている。研究努力は特に企業によるもので、2011年には国内で実施された研究開発業務の64%、国民研究開発支出の59%の資金支援を実行している。

2) 国内研究開発支出
2011年は6つの研究部門(自動車、医薬、航空、電子部品、化学、情報処理業務・情報サービス)で企業の国内研究開発支出の半分を実行している。公的セクターでは研究機関が2011年の政府による国内研究開発支出の57%強を実行している。

3) 中堅・中小企業、大企業における研究開発
2011年はフランスで研究開発業務を実施した企業の84%を中小企業が占めている。それは企業による国内研究開発支出の15%に達し、その半数以上がサービス業務に関するものである。元々国内研究開発支出の61%を占める大企業は、その4分の3を高度および中度技術の研究実施に充てている。

4) 公的機関の研究支出
2011年の主要公的機関の国内研究開発支出は2.5%伸びて92億ユーロに達した。これらの機関は公的研究の56%を実施し、フランスにおける研究の重要な担い手となっている。CNRおよびCEA民用部門で公的研究の3分の1となる55億ユーロの国内研究開発支出を実行している。

5) 研究開発業務の資金支援
2011年政府が研究開発向けに支出した予算交付額は128億ユーロに達し、研究開発業務全体の69%の資金支援をしている。残りの公的研究開発は各機関独自の収入(受託収入、知的財産権収入など)によって賄われている。企業の研究開発総予算は371億ユーロで、77%を自己資金で、16%を他企業(フランスまたは外国の)が、6%を公的資金が支援している。

6) 研究費税額控除、企業の研究開発支援策
2008年の研究費税額控除(CIR)の改定以降、その恩恵を受ける企業数は大きく増加した。フランスで研究開発を行う企業のほとんど全部が関与している。CIRによる信用額は2011年で52億ユーロに達し、国内総生産の0.26%を占める。これは企業の研究開発に対する直接的な公的資金支援の倍に当たる。

7) 地方自治体による研究および技術移転の資金支援
2012年、地方自治体は研究・技術移転の資金支援に12億ユーロを充てている。そのうちの30%は国・地方プロジェクト契約の一環である。

8) 研究に充てられる予算の社会・経済的目標
2013年、研究・高等教育省際ミッション(MIRES)には140億ユーロの研究向け予算が結集されている。この予算の約80%は公共サービス任務に対する補助金名目で研究・高等教育実行機関に配賦される。介入・指導支出は18億ユーロでMIRES予算の13%、残りの7%は国際的なプログラム・組織向けに使用される。

9) フランスにおける研究開発の資金支援と実行
国民研究資金支援は主として企業、国、地方自治体、EUに依拠する。公的研究開発実行機関への手段の委託、企業向けの研究開発支援措置、予算以外の措置が、研究開発向けの公共政策の手段となっている。

10) 研究開発の人的資源
2011年には542,700人がフランスにおける研究業務に携わっている。過去3年間に研究者数は政府機関(+3%)よりも企業(+24%)において急速に伸びた。女性は研究要員全体の30%、研究者の26%を占める。

11) 企業における研究者
2011年には197,000人が企業における研究業務に従事した。これらの研究者は平均年齢39歳の若手で、その大部分が理工系グランゼコールの出身者である。そのうち女性が20%を占め、男性に比べるとより若手で大学(博士、修士)出身者が多い。

12) 研究による人材育成
2012学年次には63,500人の学生が大学の博士課程に登録されており、2011年の課程では12,000人に博士号が授与されている。大学の博士課程に初めて登録した学生の半数以上が、その前年の大学のどの学位にも登録されておらず、修士課程の出身者は学生の43%に過ぎない。4,000人の学生が大学以外の学校で博士号の準備をしており、そのうち900人に博士号が授与されている。

13) 博士号取得者の研究歴開始
2012年には、2007年の博士号取得者のうち10人中約9人が安定的雇用状態にある。そのうち4分の3は官民の研究界で仕事をしている。その他の任務に雇用された博士号取得者とは異なり、彼らは自らの雇用に満足しているようで、明らかに高い報酬を得ている。

14) イノベーション新興企業
イノベーション新興企業(JEI)という資格は、研究業務を実行する新たな中小企業の創設や発展を促進する目的で設けられた。2011年、これら企業の研究開発支出は7億ユーロで、主としてサービス部門に集中している。

15) 企業におけるバイオ技術の研究開発
2011年、企業はバイオ技術の研究開発業務の実施に25億ユーロを投資した。2010年と同じく企業の研究開発支出の9%でバイオ技術を取り上げている。これら研究業務は主として小規模の企業で実施されている。

16) 企業におけるソフトウェア開発、新材料、ナノ技術に関する研究開発
2011年、研究開発業務を実行している企業の10社中6社以上がソフトウェア開発、新材料、ナノ技術に少なくとも一部の投資をしている。その比率は57%未満だった2009年以降連続して上昇している。

17) 環境に関する研究
2011年、直接または間接的に環境に充てられフランスで実行された研究開発支出の見積額は46億ユーロで、全体の支出の10分の1に当たる。2011年は環境に関する研究開発支出(エネルギーと輸送を除く)の約60%が企業の負担となっている。10年前は20%未満であった。

18) 研究開発フレームワーク計画を通しての欧州研究圏におけるフランス
第7次研究開発フレームワーク計画のプロジェクト参加では、フランスはドイツ、英国に次ぐ第3位である。2013年2月現在これらのプロジェクトの51.7%に参画し、10%以上のプロジェクトを統括している。フランスは特に「航空・宇宙」および「原子力」の領域で存在感がある。

19) フランスの科学論文発表
2012年にフランスは全分野合わせて世界の科学論文発表の3.6%に寄与している。フランスの研究は主要分野である数学や「天文学、天体物理学」分野に大きな特徴が見られるものの、発表論文が国際的なレベルで最も多く引用されるのは「農学、植物学」、「土木工学、鉱山」、「農産物加工」の分野である。

20) 科学論文発表で見た世界におけるフランスの地位
フランスは2012年世界の科学発表論文の3.6%を占め、世界第6位に位置している。フランスの地位の変化は欧州主要国のそれと同等で、発表に占める割合は低下しているが、引用係数は大きくなり世界平均よりは高い。科学協力相手先としてはEUおよび米国が上位を占める。

21) 欧州特許庁の特許出願で見たフランスの技術生産
2011年、フランスは欧州特許制度での出願登録数で6.5%を占め、世界第4位である。特にサブドメインとして「輸送」、「ナノ技術・マイクロ構造」、「精密有機化学」に特長がある。全領域合わせるとフランスの世界シェアは2001年以降8%減少している。この間に国際協力を含めるとフランスの欧州特許に占める割合は54%伸びている。

22) 米国特許庁の特許で見たフランスの技術生産
2011年、フランスは米国特許制度での交付特許の2%を占め、世界第7位である。特にサブドメインとして「精密有機化学」、「ナノ技術・マイクロ構造」、「薬学」に特長がある。全領域合わせるとフランスの世界シェアは2006年以降2%減少している。この間に国際協力を含めるとフランスの米国特許に占める割合は17%伸びている。

[DW編集局+JSTパリ事務所]