[本文]

国・地域名:
ロシア
元記事の言語:
英語
公開機関:
ロシア連邦政府
元記事公開日:
2015/09/28
抄訳記事公開日:
2015/12/24

スコルコボ創立5周年記念国際オンライン会議におけるメドヴェージェフ首相の発言

International online conference marking Skolkovo’s fifth anniversary

本文:

ロシア連邦政府の2015年9月28日付標記発表では、スコルコボ創立5周年を記念して「ロシアの技術革新の課題」に関する国際オンライン会議が開催された旨報じているところ、会議に参加したメドヴェージェフ(Dmitry Medvedev)首相の発言内容について概要は以下のとおり。

・スコルコボ構想

スコルコボのような中核拠点創設構想の議論を始めたとき、その場所と方法を考えた。ロシアには多数の研究センターがあるので、そのうちの1か所を出発点として活用することができた。もう一つの選択肢として、特定の大企業または複数企業と共同して取り組むこともできた。しかしながら、熟慮の末、グリーンフィールド(更地)プロジェクトを立ち上げて、インフラをゼロから創設するという選択をした。なぜなら、最先端のイノベーション・センターをロシアに構築することが必要であると判断したからである。その当時、ロシアにはそのような最先端の施設はなかった。モスクワから遠くないところにこのような施設を建設することで、官民協力の下に官だけでなく民からも多額の投資を得ることが意味のあることだと考えた。

スコルコボとは、知的能力、資金、運営面での問題解決を一箇所に集結して実施することを目指して始動した大型のプロジェクトである。実際のところ、大型投資を要するプロジェクトだが、その期待に応えるものであると確信している。

・スタートアップ企業

スコルコボには現在1,000社のスタートアップ企業がある。1,000という数が少ないか多いか判断するのは難しいが、発展のための重要な環境を作り出すには十分な数であると期待したい。当然、企業数は今後も増えていくことになるだろう。

・スコルコボ科学技術大学(Skoltech)

大型のイノベーション・センターに専門教育施設が必要なことは明らかである。当初からSkoltechは当該センター全体を発展させるための不可欠な要素になると考えられている。

・MITの協力

MITとは多数の協力関係があり、現在も継続している。露米関係など、最近の困難な政治的環境が背景にありながらも、このような協力関係が全く望ましいものとして評価されていることを喜ばしく思う。研究および教育における協力を継続することが、次世代の学生にとっても、学術界・企業界における信頼と協力の雰囲気を高めるためにも重要である。

・知的財産権とインターネット

スコルコボには世界知的財産権機関(WIPO)などの権威ある国際機関の駐在事務所が置かれており、知的財産権の規制に関係する全ての者がその恩恵を受けられ、その結果ロシアにおける知的財産権保護の状況が改善される。

インターネットは、前例のないコミュニケーション手段や利用するのに非常に明瞭で快適な環境を生み出した反面、例えば今ではごまんと存在する著作権や発明権の規制・調整方法を行き詰まりの状態に追い込んでしまっている。インターネット関連の規制には実際面で2つの方法しかない。第1の視点は、余計な口出しをせずに、インターネットをその独自のルールにしたがって発展させておくというものである。第2の視点は、システム・セグメントの一部を規制すべしというものである。ロシア政府を代表する者としては、第2の視点に近い立場をとる。これはウェブに対して不当に関与しようという意味ではない。というのも、インターネットは今や法的基盤有するものだからである。

ドメイン・ネームの登録に関して言えば、現行システムは全く明瞭で公明正大であると誰もが見ているとは思えない。一国(米国)に集中しており、少なくとも我々はこの国にこの任務を委託したことはないので、奇妙に思える。将来は他の重要なWorld Wide Web開発要素と合わせてドメイン・ネーム登録ルールの決定を支援するある種の一般的枠組を創設することが適切であるように思える。

ウェブ上で著作権をどのように保護するかは、知的財産権の問題である。一方では著作権所有者が受け入れ可能で、他方では情報環境を麻痺させることもなく、合法的な方法で知的財産を活用する人々に対して克服できないような障壁を作らない、そんな企画を展開する必要がある。これらを兼ね備えるには非常に大規模で複雑な作業を要する。WIPOの支援を得て関係国全てが共同で当たることを望む。

・イノベーションの展開

イノベーションに基づく以外にロシアの国家的発展の道はないと見ている。近未来以降の発展にハイテクが不可欠であることは明らかである。スコルコボやその他多数の研究センターなどで分野を特定して設定されている優先課題は、世界中の大多数の研究センターの課題と同じである。

スコルコボでの研究の進展においては5つの主要優先課題を挙げている。バイオテクノロジー、宇宙技術、ハイテクによるエネルギー問題解決策などである。ロシアは世界最大級のエネルギー供給国の一つであるが、エネルギー技術も変化しますます複雑になり、結果的に全く新しい現実が展開している。この領域でのパートナーとの協力は望ましいことである。

・自動運転車

ここ50年以内にはいわゆる自動運転車(無人自動車)が通常の輸送システムの一部になると考えられる。したがって交通規制を行う各国政府は大手自動車メーカーとともに、このような車の使用に関して規則の調整を行う必要がある。いかなる車も事故の原因となるので、その利用は厳格な法的・技術的規制を受ける必要がある。

・アジア太平洋地域パートナーとの協力

多くの領域で協力や共同ハイテク事業を展開することで、アジア太平洋地域との協力は可能である。その場合考慮すべきは、研究・設計・創造プロセスは概してロシアの強みであるが、商品化・生産における構想の実現はロシアの弱点であり、日本、韓国、中国、その他のアジア太平洋地域の隣国から学ぶべきものがある。

・ウラジオストク研究センター

これまで、極東連邦大学には、沿海地方のウラジオストクに本拠を置く研究センターとして多くの資金と人材を投入してきた。現在は大型のキャンパスが建設され、真の学術センターができ上がっている。モスクワその他の都市出身のトップクラスの専門家が多数勤務している。主としてアジア太平洋地域の国々からの客員教授や招聘研究者を多数擁する。

・研究ファンディング

経済的に困難で予算の制約の厳しい状況においても、研究の重要性、基礎・応用の学術研究に対するファンディングの重要性は認識している。したがって、研究に対する支出は2016年度予算においても、少なくとも前年と変わらない。科学への公的資金は減らさず、必要と認めた場合は、出来うる限り割り当てを増やす。

[DW編集局]