[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2022/05/25
抄訳記事公開日:
2022/06/30

欧州防衛基金:EUの防衛能力および新たな防衛イノベーションツールの増強に10億ユーロ

European Defence Fund: €1 billion to boost the EU's defence capabilities and new tools for defence innovation

本文:

(2022年5月25日付、欧州委員会(EC)の標記発表の概要は以下のとおり)

欧州委員会(EC)はこのほど、欧州防衛基金(EDF)の2回目の年次ワークプログラムを採択したことを発表した。EDFの2022年ワークプログラムは、総額で最大9億2,400万ユーロをファンディングに割り当てる。防衛投資ギャップに関する共同発表の1週間後、欧州委員会は、戦略的防衛能力に共同で適切な投資を行うための新たなファンディングを開始する。さらに、2022年のワークプログラムでは、防衛イノベーションを促進するための一連の新しいツールが導入される。これらはすべて、EU防衛イノベーション・スキーム(EUDIS)と呼ばれる新しい1つの傘の下に置かれる。EUDISは、2022年2月15日の欧州委員会の防衛パッケージですでに発表されており、欧州防衛機関(EDA)のイノベーションハブ(HEDI)と緊密に連携して機能する。

■欧州産業界における共同防衛研究開発のための継続的投資

EDFは、欧州の防衛能力開発の断片化を抑えるのに役立つ。また、産業競争力を強化し、欧州全域における相互運用性を促進する。EDFの2022年ワークプログラムは、6月初旬に開始される8件の公募に沿って構成される33のテーマに取り組み、いくつかの大規模で象徴的なプロジェクトを開始する。これは、加盟国の共通の合意があり、「戦略的コンパス」でさらに詳述されている、EU能力の優先課題に沿った関連防衛技術・能力を対象としている。さらに、ワークプログラムは、2つのEDF先行プログラムの下で開始されたいくつかの重要プロジェクトへのファンディングの継続性も保証する。

今年は、それぞれ1億2,000万ユーロを超える予算を備え、能力開発を支援する次の2つの重要領域が脚光を浴びる。

▽宇宙
宇宙を拠点としたミサイル早期警戒能力と、インテリジェンス、監視、偵察のための革新的なマルチセンサー・宇宙ベース・地球観測能力の開発にファンディングが提供される。さらに、小型衛星をさまざまな種類の軌道に迅速に配置できる応答性の高い宇宙システムの研究にもファンディングが見込まれる。

▽海戦
ファンディングの対象として、(i)中小規模の海軍に特に適したクラスの船舶開発に関連する施策、(ii)海軍がより小規模で、より高速で、より多様な、新たに進化する脅威に対処できるようにするための、欧州海軍の共同監視能力の開発、がある。

さらに、次の2つのカテゴリのそれぞれの研究開発に7,000万ユーロが割り当てられる。

▽サイバー
サイバー状況認識、サイバーセキュリティ、レジリエンスの観点から欧州の能力を向上させ、防衛サイバー・情報戦のツールボックスを開発する。

▽情報の優位性
欧州軍の指揮統制システムと展開可能な特殊作戦指揮ポストの開発に資するプロジェクト。研究領域では、ファンディングの取り組みは、「欧州単一空域」の文脈における民事・軍事統制センター間の相互運用性とデータ交換に焦点を当てる。

ハイエンドの防御能力やそれを可能にする技術も、さまざまなカテゴリの施策を通じて対処される。これらには、軍の機動能力、空中電子戦、陸軍のための共同戦闘に資する中型戦術貨物輸送機の開発、水中の有人・無人チーム編成など水中アプリケーション向けの技術と持続可能なコンポーネントの開発が含まれる。

■20億ユーロのEU防衛イノベーションスキームを支援

EU防衛イノベーションスキームは、防衛イノベーションと起業を支援するために、関連するEUイニシアチブを1つにまとめる。民間イノベーションに由来する実証済みの慣行が、防衛セクターに活用される。EDFの2022年ワークプログラムでは、欧州委員会は革新的な起業家、新興企業、中小企業を支援し、それらを防衛産業エコシステムに取り込むための一連の施策を開始する。

▽防衛エクイティ・ファシリティ
欧州委員会は、このエクイティ・ファシリティに年間2,000万ユーロ、総額1億ユーロを投資する予定である。この投資には、欧州投資基金(EIF)や民間投資家を関与させることなどにより、防衛産業のために、同基金の存続期間中に総額5億ユーロの投資能力を生み出す狙いがある。
▽技術チャレンジ
このチャレンジは、隠れた脅威を検出するための技術の試験と成熟化を目的としている。
▽化学・生物学・放射能・核(CBRN)枠組パートナーシップ協定
この新規ワークプログラムでは、CBRNの脅威に対する防衛医療対策策定のための4年間のパートナーシップ結成に向けた公募を導入する。

上記の新規措置は、イノベーション促進を目的とした提案公募を繰り返し行うことで、破壊的技術や中小企業への現行の支援を補完するものである。欧州委員会の狙いは、EU防衛イノベーションスキームの下で、EDFを引き金として、2027年までに防衛イノベーションに最大20億ユーロの総投資を生み出すことである。

[DW編集局]