[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
国防高等研究計画局(DARPA)
元記事公開日:
2016/01/19
抄訳記事公開日:
2016/03/30

人間の脳とディジタル世界を結ぶ埋め込み式デバイスの開発

Bridging the Bio-Electronic Divide

本文:

2016年1月19日付の国防高等研究計画局(DARPA)の標記発表記事の概要は以下のとおりである。

DARPAの新規プログラムでは、人間の脳とディジタル世界との間を結ぶ、史上初の信号分解能やデータ転送帯域幅を提供する埋め込み式の神経インターフェースの開発を目的としている。このインターフェースは、脳内のニューロンが使用する電気化学的言語と情報技術の言語を構成する1と0の世界との間の変換を掌る翻訳機として機能することを期待されている。目標は、1立方センチメートルを超えない大きさの生体適合デバイスでこのコミュニケーション・リンクを達成することである。

「神経工学システム・デザイン」(NESD)プログラムは、ニューロテクノロジーの研究能力を劇的に向上させ、新たな治療法の基盤を提供する。本プログラムで可能性のある応用の一つとして、現在の技術のものより、はるかに高度な分解能と体験品質を持つディジタルの聴覚または視覚情報を脳に送り込むことで、視覚欠損あるいは聴覚障害を補うことのできるデバイスがある。

現在ヒトへの使用を認められている神経インターフェースでは、僅か100個のチャネルに莫大な量の情報を押し込むので、各チャネルには一度に数万個のニューロンからの信号が集中する。結果はノイズが多く不正確である。それに対してNESDプログラムでは、脳のある一定の領域にある最大100万個のニューロンのいずれとも、個別に明瞭に通信できるシステムの開発を狙っている。

本プログラムの高い目標を達成し、想定しているデバイスが研究以外にも実際に使用される可能性をもてるようにするには、神経科学、合成生物学、低電力エレクトロニクス、フォトニクス、医療デバイスのパッケージング・製造技術、システム・エンジニアリング、臨床試験など多数の分野にまたがる総合的なブレークスルーが必要である。ハードウェア上の課題に加えてNESDの研究者らには、最初に電子的表現と皮質ニューロン表現の間の高解像度の感覚情報をコード変換し、忠実性と機能性のロスを最小限に保ちながら、これらのデータを圧縮しデータ表現する為の高度の数学的神経計算技術の開発が必要とされる。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]