[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
米国科学振興協会(AAAS)
元記事公開日:
2017/03/29
抄訳記事公開日:
2017/05/23

トランプ政権の科学予算:アポロ以降で最も厳しい予算

The Trump Administration's Science Budget: Toughest Since Apollo?

本文:

2017年3月29日付の米国科学振興協会(AAAS)による標記発表の概要は以下のとおりである。

2018年度予算案は研究開発にとって間違いなく厳しい予算である。かってレーガン政権も研究開発費を削減しようとしたが、トランプ政権はそれ以上に基礎研究すら後退させようとしている。事実、トランプ政権の最初の予算案は科学技術にとってアポロ時代以後最悪の予算だという議論がなされている。

レーガン政権とトランプ政権の財政戦略には共通点が多い。どちらも国防支出と減税を優先させており、非国防予算は縮小しようとしている。レーガン政権の「ゼロベース政府」の考え方では、連邦政府の各プログラムが各々の正当な存在理由を明確にするという義務を課したが、それでも一部の基礎研究には一定の余地を残した。これがレーガンとトランプの予算上の最も大きな違いである。

レーガン政権のその後の予算では、ますます肯定的な言辞と合わせて基礎研究の扱いは良好であった。レーガンの1987年一般教書演説では、国の競争力に対する脅威に対抗するために科学技術研究センターの新設および基礎研究への強力な新規ファンディングを求めており、さらに1988年度予算ではNSF予算を5年以内に倍増するよう提言している。レーガン政権の「ゼロベース政府」方式はまた、超電導超大型粒子加速器、ヒューマン・ゲノム・プロジェクト、NASAのスペースシャトルや国際宇宙ステーション(ISS)のような産業界の役割を超えた「ビッグ・サイエンス」活動を支援するという意欲にも満ちている。

連邦政府の技術プログラムに関して、レーガン・トランプ両政権にはさらなる共通点が見られる。いずれも政府の役割が基礎研究を超えて応用研究や技術に向かうことを深く警戒している。「商業化は商業的に実施するのがベストである」というのである。

トランプ政権の予算案はまだほとんど詳細が明らかでないが、最終的には再生可能エネルギー、エネルギー効率、化石燃料、原子力、電力網の研究に対する削減を合わせて総額20億ドルの予算節減を要求するものと見られる。この要求ではまた、エネルギー高等研究計画局(ARPA-E)の廃止も求めている。ARPA-Eは正にトランプ政権が優先しようと考えているように見える部類の初期段階の技術研究の活動に焦点を当てたものであるから、トランプ政権のこの判断は理解に苦しむ。

レーガン・トランプ両政権で共通点が見られるもう1つの領域は、環境研究開発である。この領域には、いかなる種類であろうとも気候関連支出に対するトランプ・チームの敵意がよく表れている。海洋大気局(NOAA)に対する究極のトランプ予算は、レーガン政権の場合と非常に似通った結果になる可能性がある。レーガン政権の下ではNASAの地球科学研究活動も苦杯をなめたが、トランプ予算の下でも同じと思われる。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]