[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
国立科学財団(NSF)
元記事公開日:
2018/09/24
抄訳記事公開日:
2018/12/03

NSFが量子研究、技術への新たな助成を発表

NSF announces new awards for quantum research, technologies

本文:

9月24日付の国立科学財団(NSF)による標記報道発表の概要は以下のとおりである。

3,100万ドルの助成は量子力学の応用を研究し、次世代のセンシング、計算、モデリングおよび通信を推進する。

NSFは、米国が新たな量子技術の革命を主導することを可能とする、基盤的な量子研究に3,100万ドルを授与した。今回の助成は、量子情報科学に関するホワイトハウス・サミットにおいて、NSFが他の連邦政府機関や民間のパートナーとともに参加することに合わせて発表される。

「量子の革命とは、明日の技術にとって何が可能であるのかについての定義を拡大するものである。」とNSFのフランス・コルドバ長官は述べた。「NSFの支援を受けている研究者たちは、量子力学に関する我々の理解を深めるとともに、世界を変える応用を創出するためにその知識を応用することに取り組んでいる。これらの新しい投資は、量子研究開発において米国を世界のリーダーに位置付けるとともに、次世代の量子研究者を育成することに資するであろう。」この新たな助成はNSFの量子研究に関する主導的な連邦助成機関としての地位をさらに強めるものである。その役割には、安全な量子通信に必要な技術の推進、初めてとなる完全接続の実用的量子コンピュータの確立、および次世代の量子分野の科学者、技術者および企業家を育てるための学界と産業界のメンターの結束を支援することが含まれている。

NSFは、国立標準技術研究所、エネルギー省および大統領府科学技術政策局とともに、国家科学技術会議の科学委員会量子情報科学小委員会を主導している。この委員会は量子情報科学技術に関する国家アジェンダを調整することになる。

●次世代技術
今日の技術の多くは、極めて小さいスケールでの物質とエネルギーの相互作用に基づいている。量子力学は、そのような、少なくとも人の髪の毛の太さの百万分の一以下のスケールでの特性を研究することにより、研究者が粒子の振る舞いを観察し、操作し、コントロールすることを可能にしている。次世代の通信、計算、センシング技術は、量子システムにおける粒子間の相互作用を用いることで、正確さと効率を劇的に向上させることを約束する。

NSFの支援を受けている研究者は、光子の検出、生体模倣回路の構築、光ベースの通信システムの開発、その他のことを行うための新しい方法を探索するだろう。今回の新しい助成は2つの取組みを通して学際的研究を支援する。
・「学際的科学・工学により推進される研究」(RAISE)-「量子システムの変革的進展」(TAQS)の取組みの一部としての探索的量子研究に2,500万ドル
・RAISE-「量子通信のための量子統合プラットフォームの設計」(EQuIP)の取組みの一部としての量子研究・技術開発に600万ドル

支援を受ける研究チームには、量子状態の振る舞いに関する新しい可能性について研究するチームもある。その他のチームは、量子システムを安定化させ、それらを技術的応用のために一層有用なものとする新しい方法を研究する。

●RAISE-TAQS: 革新的で学際的な研究
RAISE-TAQSの助成は、量子センシング・通信・計算・シミュレーションにおけるシステムや概念実証につながる革新的アプローチ、実験的実証および変革的進展のための25のプロジェクトを支援する。

NSFのRAISE-TAQSの取組みは、複数の学問の交点にあり、科学者が探索的で先端的な概念を探求することを奨励するよう設計されている。量子技術に関連する幅広い科学的・工学的課題を吟味する用意があることを示したチーム参加者の強力なコミュニティを構築することが意図されている。

●RAISE-EQuIP:量子工学のフロンティア
RAISE-EQuIPの助成は、量子情報科学技術における工学のフロンティアを前進させるための8つのプロジェクトを支援する。研究者たちは、個々のデバイスや部品を超えてスケーラブルな量子通信システムを可能にする統合的なアプローチを探求する。

RAISE-EQuIPの取組みは、量子通信システムにおける新奇なデバイス、回路、情報処理技術、統合プラットフォームを含む技術の概念実証を意図している。今回の新しい助成は、量子信号の生成と処理のための
新的なアプローチを含む、いくつかの研究上の挑戦に取り組むものである。

●NSFの「量子飛躍」
NSFは、この数十年にわたって量子技術研究と量子情報科学を推進してきた。NSFの支援を受けたノーベル賞受賞者231名のうち、31名は量子研究を発展させたことを顕彰された。

最近の多くの学問分野における技術や機器の進歩のおかげで、研究コミュニティは今、量子科学の変曲点にいる。NSFは、この科学の重要分野を進展させる研究と新たな協働の取組みを支援していくことを約束している。「量子飛躍」と「融合研究の拡大」は、「NSFの将来投資のための10のビッグ・アイデア」のうちの2つである。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]