[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
元記事公開日:
2018/12/03
抄訳記事公開日:
2019/02/13

NASEMが課題解決のため環境工学の強化を提案

Curbing Climate Change and Sustainably Supplying Food, Water, and Energy Among Top Challenges Environmental Engineering Can Help Address, New Report Says

本文:

12月3日付の全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)による標記報道発表の概要は以下のとおりである。

次の数十年間において、世界の人口が増加するのに伴い、社会は、食料と水の安定供給の提供、気候変動の抑制、そのインパクトへの適応、健康で回復力のある都市の建設、といった差し迫った課題に直面する。これらの課題は、環境工学者に新しく、拡大された役割を求めていると、NASEMの新しい報告書は述べている。これらの課題に取り組むために、社会の多面的で厄介な問題に対する現実的でインパクトのある解決策を開発できるよう、環境工学分野における教育、研究、実践を発展させていくことを、報告書は勧告している。

環境工学者は、人間と環境が交わるところで、システムや解決策を設計する。コレラやその他の水系感染症の減少や、米国や他の国々における都市スモッグやラブ・カナルの大規模環境災害のような環境危機の克服において、環境工学者は貢献してきたと、報告書は述べている。下水施設の設計や公衆衛生の防護を起源とする環境工学の仕事は、初期においては、清浄な水の供給や汚水処理に焦点を当てていた。さらに最近では、環境工学は、大気汚染、有害廃棄物、土壌汚染、新興汚染物質などに対象を拡大し、グリーン製造や持続可能な都市の設計などに取り組んできた。

しかしながら、汚染や水系感染症は世界中に根強く存在しており、数十億の人々が清浄な水、食料、下水処理、エネルギーの不十分な状況に苦しんでいると、報告書は指摘している。他方で、人間による環境への圧迫は加速している。2050年までに世界の人口は26億人増加し、気候変動とさらなる都市化は環境と現存するインフラに新たな圧力を加えると予測されている。

環境工学者が特に進歩に貢献できるものとして、本報告書において特定されている5つのグランド・チャレンジは次のとおりである。

・食料、水およびエネルギーの持続可能な供給
・気候変動の緩和とそのインパクトへの適応
・汚染と廃棄物のない未来の設計
・効率的で、健康で、回復力のある都市の創造
・情報に基づいた意思決定と行動の促進

「これらのチャレンジは、より広範な貢献とより大きなインパクトに向けて、環境工学の教育、研究および実践を発展させていく機動力をもたらす。」と、本報告書を作成した委員会の委員長であり、ミシガン大学ディアボーン校の学長であるドミニコ・グラッソは述べた。

環境の課題に対する効果的な解決策の必要性に加えて、そのような解決策を実行することが社会の最大の利益になることを認識することの必要性について、本報告書は注意を喚起した。

コミュニティに貢献し、複雑なグローバル・チャレンジに取り組むために、環境工学の教育、研究および実践に関して、委員会は以下の新たな戦略を採用するよう勧告した。

・環境工学の実践者は、ステークホルダーや他の学問分野と協働して、現実的でシステム・ベースの解決策について、より全体的な観点から分析し、設計し、実行するべきである。また環境工学分野は、特にこの分野に参入する科学者の人種的、民族的多様性を拡大させることに焦点を当てて、より多様な人材を育てるべきである。

・環境工学の教育プログラムは、複雑なシステムのダイナミクスと、環境に関するチャレンジの社会的・行動的次元という2つの分野における基礎知識を強化すべきである。

・未来のチャレンジに対応するために必要となる協働を促進するため、研究を行う大学や組織は学際的な研究を評価し、奨励すべきである。

・助成機関と研究機関は、適切に設計された助成プログラムや、協力関係や協働が有機的に発展できる環境を育てることによって、効果的な学際的協働を助けることができる。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]