[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
高等教育・研究省(MESR)
元記事公開日:
2013/11/05
抄訳記事公開日:
2013/12/09

イノベーション国家計画の始動

Lancement du plan national pour l'innovation

本文:

高等教育・研究省の2013年11月5日標記報道発表によると、首相は「成長、競争力協約」の発表後1年を経て、政府によるイノベーション計画の主要方針を発表した。報道発表ではこのイノベーション国家政策の内特に高等教育・研究省が関わる部分を解説している。概要は以下のとおり。

[高等教育において起業家精神やイノベーション文化を育む]
学士課程以降のすべての高等教育課程における起業・イノベーション教育実施に関して、高等教育・研究省で複数の施策への取り組みが行われている。

[研究界・企業間の障壁撤廃と恒久的な対話を通じ、イノベーションに向けて行動する]
大統領と首相が推進するフランスの経済再興は、イノベーションおよび質の高い競争力を志向した断固たる政策に基づいている。イノベーションは、フランスの大きな弱点である企業との提携による基礎研究・技術研究の強化および公的研究の技術移転の過程を経由する。企業との提携研究はドイツや米国の20%に対してフランスはせいぜい10%であり、米国では40年前には存在しなかった活動が国内総生産の20%を占め、しかもその大半が公的研究に由来する。本イノベーション計画は、2012年10月に始動した「知識移転計画」および2013年7月の「高等教育・研究関連法」に盛られた複数の施策に基づくものである。

1) 技術研究の強化、基礎研究と企業との間の連携の適正化
・「将来への投資」プログラムから150百万ユーロを投じて「カルノーラベル指定研究機関」の支援を強化する。
・ 中堅・中小企業での技術普及を目的として、各地域の技術移転基盤を設置する。これはCEA Techの施策でボルドー、ナント、ツールーズに設置されており、まもなくロレーヌにも設置される。サクレとグルノーブルでの成功体験に基づくもので、現地の産業界、自治体、大学・研究機関の公的研究所などの当事者に基盤を置く。実施後6ヶ月を経て、現地の研究技師100名および現地産業との連携による2千万ユーロの研究開発プロジェクトがすでに契約済みである。

2) 国立研究機構(ANR)による「LabCom」プロジェクトの開始
公的研究と中堅・中小企業との間の共同研究室100件に関するものである。80件のプロジェクトの申請があり、18件はすでに採択されている。年間2千万ユーロが割り当てられている。

3) 2013年7月22日法において高等教育・研究の公共サービス任務として「知識移転」を記載
共有財産権特許のための特異的代理人に関する政令、公的研究由来特許の欧州の中小企業による特恵的活用に関する通達など。240百万ユーロの基金および「将来への投資」プログラムで予定されている11億ユーロの資金により、大学や研究機関発の新興企業の創設や成長の支援が可能になる。これには公的研究の成果が欧州以外の基金に買収されるのを避ける狙いがある。

[イノベーションに向けた行動: 一貫性を持たせた重点課題]
米国、ドイツ、英国、日本の各々の戦略計画にならって、フランスは戦略的研究計画「France Europe 2020」を今年5月に立ち上げた。これには、エネルギー移行、産業再興と未来の工場、医療、持続可能な都市システムなど10項目の主要課題が定められている。第2次「将来への投資」プログラムで高等教育・研究省の施策に向けられる予定の121億ユーロのうち総額41億ユーロが充てられる。主要なものは次のとおり。

・産業再興支援策として主要汎用技術の開発と普及に150百万ユーロの投資
・医療におけるトランスレーショナル研究に400百万ユーロ
・宇宙に50百万ユーロ
・高性能計算に50百万ユーロ

研究の方向付けに関するこのような施策の進行は、フランスの明日の産業を描く34項目の計画やイノベーション委員会が特定した7項目の目標とも合致するものである。イノベーションを推進する多様なアプローチと併せて、国家研究戦略を策定する任務を持った「研究戦略会議」が首相の下に近々設置される。

[DW編集局+JSTパリ事務所]