[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州共同体研究開発情報サービス(CORDIS)
元記事公開日:
2013/11/20
抄訳記事公開日:
2013/11/29

原子スケール研究において欧州の将来を担う研究者を育成

Training Europe's future scientists in atomic scale research

本文:

欧州共同体研究開発情報サービス(CORDIS)の2013年11月20日付のニュースで、標記の記事が掲載されている。以下にその概要をまとめる。
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どうすれば原子間の距離や原子の中の空間を測定できるのか?答えは「定規」、それも原子のサイズの定規を使うことである。ここで登場するのが、中性子散乱とミューオン(電子に似た素粒子)分光法である。

この2つの画期的な技法は、研究者が、磁気特性を含め物質の構造と力学を原子レベルで調査するのに役立つ可能性を秘めている。技術を基盤とする我々の社会が直面しているエネルギー・環境から、健康に至る諸課題に対する先進的な解決策は、原子スケールまで掘り下げた物質特性に関する最新の知識に大きく依存している。中性子散乱、ミューオン分光法のいずれも、工学や物質科学、物理学、化学、地球環境科学、文化遺産、生物医学などの分野の研究に広く応用することが可能である。従って、これらは欧州研究圏の確立にも不可欠である。

「中性子散乱・ミューオン分光法統合構想(Neuron Scattering and Muon Spectroscopy Integrated Initiative)」(NMI3-II)と命名されたEUが助成する大規模プロジェクトが昨年始動し、現在、従前のプロジェクト(NMI-3)で行われていた画期的な研究作業を継続している。このプロジェクトの主要な目的の一つは、共同研究を進めるために、欧州の研究者が中性子とミューオンに関連した既存の計器と専門知識全般にアクセスできるようにすることである。

このNMI3プロジェクトはさらに、中性子とミューオンの研究分野に若手研究者を惹きつけることも狙いとしている。NaMES(中性子・ミューオンに関する欧州学校(Neutron and Muon European Schools))と命名されたこの特別なイニシアティブは、質の高い教育を行っている多くの学校を総合的に支援するもので、実際に欧州において、中性子およびミューオンの散乱に関する分散型の研修施設を設立している。

NMI3プロジェクトではこれまでに、物質科学の分野において何百もの実験が行われてきた。飛躍的な進歩は通常、単一の実験ではなく、数多くの研究とその他補完実験による複合的な成果としてもたらされる。NaMESイニシアティブにより、中性子散乱およびミューオン分光法に関する専門知識が確立され、将来的にはさらに多くのイノベーションが可能になるものと期待されている。
NMI3-IIプロジェクトは2012年2月に開始され、2016年まで実施される予定で、EUから約1,600万ユーロの資金を受領することになっている。

[JSTパリ事務所]