[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
議会科学技術評価局(OPECST)
元記事公開日:
2014/01/09
抄訳記事公開日:
2014/02/12

科学・技術・産業文化の啓蒙と共有: 喫緊の課題

FAIRE CONNAÎTRE ET PARTAGER LES CULTURES SCIENTIFIQUES, TECHNIQUES ET INDUSTRIELLES : UN IMPÉRATIF

本文:

議会科学技術評価局(OPECST)は2014年1月9日標記報告書を公表した。以下はその結論部分の概要である。

「知識社会は我々に共有された新たな世界の誕生をもたらし、その新たな世界ではあらゆるところで創造が展開される。科学を伝授する教育が第一義的にそれに関与していることは明らかである。教育が科学技術文化を創造するというのではなく、教育によって文化そのものにおける科学技術の根深さを認識するのである。欧州の歴史や近代科学への欧州の貢献から心に響く認識である。」これは科学アカデミー会員で天体物理学者のピエール・レナ氏の言葉であるが、本報告書が当事者や政策決定者の全員に対して提示しようとしている意図を端的に表している。

科学文化の共有は、複数のレベルで民主的に知を構築する手段である。科学、技術、産業の知識を共有すること、それによって、社会の進歩を図り21世紀の民主社会の課題を把握するための昨今の議論や判断において、各人が応分の役割を果たすことが可能になる。それは社会の民主化に関わることでもある。組織化されたものであるか否かを問わず教育において科学、技術、産業文化の共有を向上させること、それには社会的出自や性別とは無関係に、専門とりわけ科学の将来を各人が選択できるようにする目的がある。また知識に基づいた堅実な経済発展を図ることで、技術や産業に関わる職業に新たな価値を与えることになる。重要な課題であるが、科学、技術、産業文化の啓蒙の果たす重要な役割が必ずしも上記目的に沿って十分認識されているとは言いがたい。わが国(フランス)にはその能力は無限にあるが、それが十分活用されていないと思われる。

本報告書では大きく次の4項目の提言をしているが、これらの提言では上記のような課題に応えることを期待している。

・教育制度において科学、技術、産業文化の共有の進展を図ること
・科学・技術知識の利用における不平等を小さくすること
・科学、技術、産業の当事者と公衆との間の冷静な対話文化を推進すること: 共同責任
・統治の簡素化と改善を図ること

「普及(diffusion)」という概念では科学、技術、産業文化に今日関係する当事者や施策の豊富さをもはや言い表せない。したがって本報告書ではむしろ「科学、技術、産業文化の啓蒙および共有」と呼ぶよう提案した。我々は科学を前にして何人も平等というわけではないので「啓蒙」とした。つまり科学者と単なる市民とでは、同じテーマに関する知識のレベルが同一ではない。しかし我々は誰もが理解や議論への参加を可能にする手段を備える必要がある。「共有」はその意味で下向きの普及(diffusion)よりは適正な概念である。

[DW編集局+JSTパリ事務所]