[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
米国科学振興協会(AAAS)
元記事公開日:
2014/01/28
抄訳記事公開日:
2014/02/28

2014年歳出におけるR&D費:全体像

R&D in the FY 2014 Omnibus: The Big Picture

本文:

米国科学振興協会(AAAS)は1月28日、2014年度歳出法が成立したのを受け、研究開発(R&D)費がどのように配分されるかを分析した。全体的には増減入り混じった結果となるが、これは12月のライアン=マレー案による制約が厳しいことを考えると、当然のことである。AAASによると、2014年度連邦R&D費は1362億ドルで、2013年度の1327億ドルよりは増えたものの、2012年度の1425億ドルからは減額となった。
強制削減基準以降、表面上は改善しているかのように見えるが、2013年度からの増額は2.6%に過ぎず、ほとんどインフレで相殺されてしまう。ただし、表面にみえる数値だけに焦点を充てるのは短絡的な見方であり、数値の裏にはいくつかのトレンドが隠されている。機能別にR&D費を分析すると、防衛及び民生分野に使われる予算が真逆の方向に進んでいることがわかる。更に、研究と技術開発に使われる予算も対照的な結果となった。
民生R&D予算は2012年度と同等になる。民生R&D予算は主に基礎及び応用研究費であり、多くは大学へのファンディングとして割り当てられる。予算を受託するのは大学に限定されておらず、国立衛生研究所(NIH)や農業研究サービス(NRS)から資金援助を受ける内部研究機関もある。AAASの予測では民生R&Dは強制削減基準以降7.6%上昇するとされており、これは2012年比2.5%増となる。この結果は、2012年度予算へ「ほぼ」回復したとされるが、インフレで名目増額は相殺される。インフレ調整済みのドルで見てみると、民生R&Dは2012年度比に対して1.5%減となる。数値的には下院が要求した強制削減基準以降のものとは異なり、強制削減の引き下げを求めた上院やホワイトハウス案に近いものとなった。
民生R&D予算の配分にはいくつか特徴があり、予算確保に成功した省庁としなかった省庁があった。例えば、エネルギー省の中では科学局は上院に近い数値となり、低炭素技術のプログラムは下院の大幅削減を免れた。農務省予算も上院提案に近いものとなり、NASAの科学・探査プログラムも予算を確保した。他方、NIHは2012年度に比べると7億ドルも減額されており、米国地質調査所(USGS)や環境保護庁(EPA)も他省庁に比べて予算が減額された。また、議会は医療費負担適正化法(Affordable Care Act)で約束されていた患者中心の結果研究を行うヘルスケア研究局(AHRQ)へ予定されていた1億ドルの予算を取り消した。とはいえ、多くの省庁が強制削減下に置かれていた時よりは好ましい予算となっている。
バイオマスR&Dイニシアティブに対しては現在の2000万ドルの予算に対して、300万ドルが追加された。さらに、農業研究に集中する機関設立に向けて、2億ドルの予算を確保することとした。
防衛関連のR&Dは主に国防総省(DOD)が担当になっているが、民生R&Dとは性格を異にする。その多くが技術開発の最終局面に充てられており、予算は業者が請負人となる。AAASの予測では防衛R&D予算は2012年度比10%削減となり、2013年比1.6%削減となる。インフレ調整を行うと、ピーク時の2010年と比較すると24.5%削減となる。
防衛関連R&D費は全体的に減額されたが、DOD他の非防衛関連省庁のように、国防高等研究計画局(DARPA)や陸軍研究所、大学、その他研究機関にも多くの資金を提供している。むしろDODの予算は国立科学財団(NSF)よりも多く、癌などの疾患に対する研究を行う学外研究に対して防衛健康プログラム(Defense Health Program)として予算を出している。
DODで減額対象となったのは、終了段階に近い技術開発関連のもので、研究プログラムは削減を免れた。基礎研究や医学研究はインフレ調整後も増額となったため、関連業界は予算削減の影響を感じないこととなる。また、国家核安全保障局(NNSA)のR&D費用も比較的減額を免れた。
歴史的に見て、R&Dは2012年度のピークを下回る。AAASの予測では、インフレ調整後もR&D費用は2012年度のピーク時と比較して15.8%減となる。しかし、これらは防衛関連の減額が多く、非防衛のみでみると3.8%の減額にしかならない。ただし、民生関連の予算のピークは2004年度にあり、NIHの予算は現時点の倍あった。もしこのタイミングを比較基準とした場合、民生R&Dは6.1%減額したことになる。
連邦R&Dは戦後、GDP比で最低額となる。AAASの予測では連邦R&D費は2013年度GDPに対して0.82%となり、1976年度の1.27%と比べても低い。このトレンドは2014年度も継続し、予想ではGDPの0.8%となる。これらも全て防衛関連の予算削減からくるものであり、研究に対する費用、特に民生に関するものはGDP比にすると微増である。
大統領の2015年度予算案は3月4日に公表される予定である。裁量支出が2014年度よりも増やせない中、12月の財政合意と全体予算が新たな安定期突入を後押しするのか、投資への道を示すのか、現時点では予想がつかない。

[DW編集局]