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- 国・地域名:
- ドイツ
- 元記事の言語:
- ドイツ語
- 公開機関:
- ヘルムホルツ協会(HGF)
- 元記事公開日:
- 2014/01/31
- 抄訳記事公開日:
- 2014/03/04
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ガン患者の生存率と居住地域の関係
- 本文:
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ドイツで初めてガン患者の生存率が居住地域の社会、経済的条件に影響されるか否かの調査が実施された。これに関しヘルムホルツ協会ドイツ研究センター傘下のドイツ癌センターが概略以下のような報道発表を行った。
ドイツ癌研究センターのブレンナー教授のグループが、ガン患者の生存率が居住地域の社会、経済的条件に影響されるか否かを調査した。2月4日の「世界対がんデー」あたり、発表したもの。比較的収入の低い地域の患者の生存率はより低く、特に診断直後3か月に顕著である。
裕福なガン患者は、低所得の患者より生存のチャンスが大きいということは、世界的に研究者の間で知られている。しかし、誰もが健康保険に加入し、世界で最も裕福な国に数えられるドイツにこのことが当てはまるのだろうか。ブレンナー教授の研究グループは、ドイツの16州ガン患者データバンクの内の10のDBを評価した。これはドイツ総人口数のほぼ40%をカバーするものである。この分析は1997年から2006年にかけて、最も頻度の高いガンの種類(25ケース)に罹った患者100万人を対象としている。
患者の匿名性を確保するため、分析は居住市区町村ではなく、郡を単位として行った。経済学的な指標は、一人当たりの収入、失業率、地域の収入・支出等。
最も平均所得の低い郡の患者のうち20%は、がんと診断された後、他の全ての地域の患者より早く死亡している。これは調査対象となった25種類のガン全てについて言えることで、診断直後3か月ではその傾向が顕著であり、この地域の患者は死亡のリスクが33%高くなっている。診断後9か月ではその差は20%、その後の4年はあまり変化なく16%であった。
当初研究グループは、所得の低い地域の住民は早期にガンと診断されるような機会がなく、より遅い、治癒のチャンスの少ない段階でガンが発見されるのではないかと推測した。しかし調査によって、患者個人の状況ではなく、地域の経済的が影響しているのでは、と考えられるようになった。例えば経済的に恵まれない郡においては、専門病院行けないとか、そうした病院があっても収容能力が少ないといったことである。
調査対象となった郡はそれぞれ人口16万人ほどであり、社会経済学的な調査範囲としては広すぎて、それだけに正確な調査という点では難しい点がある。より細かな分析が可能であれば、豊かさとガン生存率との関係についてより精細な結論をだすことも可能かもしれない。研究グループの一人は「臨床的なガンDBのデータによれば、少なくとも将来、治療そのものに差があるか否かも確認できるであろう」としている。ドイツ癌研究センターの理事長ヴィーストラー教授は、「経済的に恵まれない地域の患者の死亡率が高いことの原因を解明することが緊急に必要であり、その上でドイツの全てのガン患者が平等な治療機会を得られるよう対策が可能」と語っている。
ドイツ癌研究センターの資金は、連邦教育研究省(BMBF)が90%、バーデン・ヴュルテンベルク(BW)州が10%を負担するもので、ヘルムホルツ協会ドイツ研究センターの一機関である。 [DW編集局]