[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
研究・イノベーション総局
元記事公開日:
2014/08/12
抄訳記事公開日:
2014/09/30

ナノ医薬を利用した新しい治療法

Finding a better way to help treat disease

本文:

欧州委員会研究イノベーション総局は、2014年8月12日に標題のプロジェクト紹介記事を発表した。以下にその概要を紹介する。
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実験室で望ましい効果を挙げる多くの薬物は、臨床試験にかけられることがない。それは、その薬物が深刻な副作用をもたらす可能性があるか、ただ単に人体に吸収されることが不可能だからである。

このような否定的な反応を回避するため、EU助成の研究事業である”Meditrans”は、より的確にガンや関節リウマチなどの疾病の治療に資する迅速な薬物送達システム(ドラッグ・デリバリー・システム)を開発した。

本プロジェクトチームは、小さな管やナノ粒子などのキャリア材料を利用するナノ医薬に立脚しており、これを活用すれば正確な量の薬物を特定の身体の臓器や細胞に届けることができる。本プロジェクトのコーディネーターであるGert Storm博士(ユトレヒト大学/オランダ)は次のように述べている:「病変部分のみに必要な量の薬物を投与することによって、必要な薬物の量と副作用を大幅に減少させることができます。」

Meditransプロジェクトの主要な成果は、特定のドラッグ・デリバリー・プロセスにおける様々な段階を観察するために本チームにより開発された画像検査法である。これらは “MRIイメージング・プローブ(探針)”と呼ばれ、これらを使うことにより、体内のナノ医薬の位置、薬物の拡散プロセス、患者への最終結果を観察することができる。さらに、本チームは特定のナノ医薬の毒性を評価し、このことは将来の開発に非常に重要なステップとなった。

「我々のアプローチは、より効果的でより少ない毒性の医薬の開発です。そのため、薬物の使用量と治療費を著しく減少させ、欧州内外の医療制度の負担を和らげることができるでしょう。」と、Storm博士は説明している。

Meditransプロジェクトはすでに実験で将来性を示しており、今後更に研究していく4つのナノ医薬を特定した。もし全てがうまくいけば、4つのナノ医薬は産業パートナーによって商品化され、最終的には市販されるだろう。

Meditransプロジェクトは、薬学者とイメージング・プローブ開発者のコミュニティの強力な連携を創り出してきた。この連携によって、欧州の画像誘導によるドラッグ・デリバリーという新興分野が成長してくものと期待されている。

<プロジェクト詳細>
・ プロジェクト名:MEDITRANS(FP7 26668)
・ 参加国:オランダ(コーディネーター)、フランス、ドイツ、ノルウェイ、ポーランド、ベルギー、英国、イタリア、イスラエル、スペイン、スイス、デンマーク
・ 総事業費:約1,484万ユーロ
・ EU助成額:約1,073万ユーロ
・ 期間:2007年1月〜2011年3月

[DW編集局]