[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
国立宇宙研究センター(CNES)
元記事公開日:
2015/01/01
抄訳記事公開日:
2015/02/03

国立宇宙研究センター(CNES)の2020年に向けた目標

Ambition 2020

本文:

国立宇宙研究センター(CNES)は2015年1月標記報道発表文書を公表した。その中からCNESの予算、2020年目標について述べた部分の概要を以下に記す。

[CNESの予算規模]

フランスが民生用宇宙活動に充てる予算は住民1人当たり年30ユーロ強で、米国(同46ユーロ)に次ぐ世界第2位であり、ドイツ(同16ユーロ)、英国(同6ユーロ)より大きい。

2014年のCNES予算は1,982百万ユーロで、内訳は次のようになっている。
・欧州宇宙機関(ESA)の分担金: 763百万ユーロ
・国家プログラム: 594百万ユーロ
・「将来への投資」プログラム: 300百万ユーロ
・固有資産: 325百万ユーロ

2015年のCNES財源は2,126百万ユーロに達し、内訳は次のようになる。
・ESAの分担金: 827百万ユーロ
・国家プログラム: 734百万ユーロ
・「将来への投資」プログラム: 202百万ユーロ
・固有資産: 363百万ユーロ

[2020年に向けた目標]

CNESは次の5つの領域に引き続き投資する。

1) アリアン(ロケット)
CNESは、科学、観測、通信、国防目的で、最大規模のものから最小規模のものまで、適用される業務に応じた全種類の欧州打ち上げロケットの打ち上げを実行する。CNESはまた委託された衛星の軌道投入も実行する。それと並行してアリアン6号によって欧州はアリアンに新たな価値を見出す決定をした。CNES、ESA、産業界のチームが設計したこの新ロケットは、アリアン62およびアリアン64の2つのバージョンがあり、官製・商用衛星のいずれにも適用できる。上段(第2段)の再点火が可能で、打ち上げ経費も抑制される。欧州の決定では2020年には最初の打ち上げが可能になる。

2) 科学
2014年は探査機「ロゼッタ」と彗星着陸機「フィラエ」の成功の年として記録に残る。取得したデータで我々の生命の起源に関する知識に大きな進歩がもたらされる可能性がある。フランス科学界が当初計画に大きな役割を果たした衛星「プランク」の観測結果、CNESが開発した機器「ChemCam」および「SAM」を搭載した火星探査車「キューリオシティ」の成功も素晴らしい。CNESは「InSight」ミッションでも地震計を作製している。まもなく「ExoMars」および「Mars 2020」プログラムで科学界が動員される。

その他の領域では、「Microscope」が一般相対性理論の検証を目的とした初めての科学衛星となり、「Taranis」はX線、ガンマ線を調査する予定である。CNESは、宇宙膨張の起源と神秘的な暗黒エネルギーの実体を探る目的で2020年に打ち上げられる「Euclid」ミッションには大きく関与している。また2022年には探査機「Juice」が木星に向けて8年間の旅に出発する。

3) 観測
海洋観測衛星「Janson 1および2」のほか観測衛星に2013年から「Saral-AltiKa」が加わった。その高解像度Kaバンド電波高度計は歴史的に宇宙高度計の最初のものである。気象衛星「MetOp-B」は赤外線大気探測干渉計(IASI)を搭載し気象予報能力を72時間にまで向上させ、地磁気観測衛星「Swarm」は地球の磁場のマップを作成している。

IASIは第2世代の「MetOp SG」衛星に搭載されるIASI-NGに引き継がれる予定である。2017年には、温室効果ガスおよびメタンの調査目的で、CNESとドイツのDLRとの共同開発による「Merlin」の打ち上げが予定されている。2020年には「Swot」衛星による地球上の淡水資源、生命資源の調査が予定されている。

4) 通信
CNESは欧州測位システム衛星「Galileo」の配備・投入を遂行する。この衛星群が将来、衛星によるナビゲーションに関して欧州の真の独立性をもたらすことになる。「Argos」システムも遭難時の状況等での位置特定に基盤的役割を果たす。「Saral-AltiKa」衛星に搭載された「Argos 3」が運用開始され、「Argos 4」は現在作製中である。CNESは電動推力による衛星の開発に大型投資を行い、欧州の提携機関と共同で新世代のプラットフォーム「Neosat」を開発する。併行して超高速大容量通信衛星「THD-SAT」のプロジェクトも推進する。

5) 国防
2基の「Pléiade」衛星が1メートル以下の高解像度宇宙画像を提供している。この地球観測システムは一部を国防に役立てる2重用途向けに設計されている。軍事・民生両用は宇宙通信システム「Athena-Fidus」にもあり、「Syracuse」衛星の能力を補完して陸軍と民間セキュリティの大容量ニーズに応えている。「Syracuse」システムはこのほど設計が開始された「Comsat-NG」に置換される予定である。今後の宇宙観測に関しては「Musis」衛星とその光学的宇宙部品「CSO」がある。この衛星の最初の打ち上げは2017年になり、関心対象の高解像度での観察を目的とする。軍事偵察面では偵察衛星「Ceres」がある。

[DW編集局+JSTパリ事務所]