[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
研究・イノベーション総局
元記事公開日:
2015/01/23
抄訳記事公開日:
2015/02/16

超電導ケーブル、再生可能エネルギーを後押し

Printable cables could spell green energy boost

本文:

欧州委員会・研究イノベーション総局は、2015年1月23日に標題のプロジェクト紹介記事を発表した。以下にその概要を紹介する。

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超電導体はエネルギー輸送のより効率的な手段を提供することができるが、製造と維持にコストがかかる。EU助成のプロジェクトは、送電ケーブルの材料になる超電導テープを“印刷”する方法を開発した。これにより、コスト削減と広範囲の工業利用の可能性が開かれる。

超電導体は、従来の銅やアルミニウムのケーブルと比較して、非常に少ないロスで効率的に電力を運ぶことができる素材だ。また、非常に強力なマグネットを製造することもでき、医療分野でMRIスキャナーとして活用されている。しかしながら、商業的に利用可能な超電導体を効率的に活用するには、−250度以下という超低温におく必要があるため、維持するには非常にコストがかかる。また、新型超電導体は、もう少し高温でも利用可能だが、脆弱なためワイヤーやケーブルにするのは難しく、産業利用に限界がある。

EU助成のプロジェクトである、”EUROTAPES”は、これらの課題を解決する超電導テープの製造方法を開発してきた。この方法は、インクジェット印刷で採用されている技術を使って、絶縁テープと高温超電導体を内蔵するワイヤーを製造し、依然として低温ではあるがより商業利用しやすい−180度で活用することができるものだ。

本プロジェクトは、これらを達成するために2つの新技術を開発した。一つは、テープ製造のための化学的な成膜法であり、本プロジェクトが特許を取っている。また、二つ目は、ナノコンポジット(ナノ複合材料)を活用する手法であり、1~100ナノメートルの大きさの素材の混合物を超電導テープの”印刷”のための”インク”のようにして活用するものだ。

プロジェクト・コーディネーターのObradors氏は、次のようにコメントしている;
「この技術を活用して超電導体を製造することは、本当にブレークスルーです。なぜなら、製造コストを従来方法よりも格段に低減させることができます。」

以下、同氏のコメントを抜粋する:
・本プロジェクトは、再生可能エネルギーを後押しする。なぜなら、これらのテープを使ったケーブルは電力輸送に伴う電力ロスがないため。超電導テープを使った装置は、スマートグリット内の風力と太陽光発電等の電力をバランスさせることにも役立つだろう。
・超電導ワイヤーにより、風力タービンの発電効率は現在の2倍になりうる。
・超電導テープは、核融合のための高磁場磁石を製造することもできる。
・本技術は、高磁場を活用したMRI技術など医療分野においても貢献するだろう。
・2017年2月までのプロジェクトの残りの期間で、本チームは素材・技術の産業用途について調査を続けていく。プロジェクトの終わりまでに、本プロジェクトのコンセプトの実用可能性を産業界に示すために、500メートルの長さの超電導テープを製造したい。

<プロジェクト詳細>
・プロジェクト名:EUROTAPES
・参加国:スペイン(コーディネーター)、ドイツ、フランス、ルーマニア、オーストリア、ベルギー、英国、イタリア、スロバキア
・総事業費:1,995万6,431ユーロ
・EU助成額:1,349万9,939ユーロ
・プロジェクト期間:2012年9月〜2017年2月
・プロジェクト・ウェブサイト:http://eurotapes.eu/

[DW編集局]